デザイナーのためのヨーロッパホテルガイド 〜水まわり編〜 Vol.83

ホテル・クール・デュ・コルボー(フランス・ストラスブール)

2013.03.18

Hotel Cour du Corbeau

Add: 6-8 rue des Couples F-67000 Strasbourg, France
Tel: (+33)3/90 00 26 26
Fax: (+33)3/90 00 26 36
E-mail: info@cour-corbeau.com
URL: http://www.cour-corbeau.com

16世紀の木組みのルネッサンス建築コンプレクスが、ラグジュアリーなブティックホテルとして再生。


コルボー広場から中庭へのエントランス。この通路の奥に洗練されたブティックホテルがあるとは思いも寄らないのでは?


中庭。まさにアルザスの雰囲気。赤いゼラニウムが古い木の欄干にそれはきれいに咲く。

中庭奥にロビーラウンジへのエントランス。


夜は夜でまた違った味わい。中世にタイムスリップしたよう。


中庭のテラス席。写真右手がバーのある棟。天気がよければ朝食もここで。白い可憐なガーデンファニチャー。



中庭に面したエレガントなロビーラウンジ。カーペットを敷いたように四角く古い石が木の床にはめ込まれた形なのも興味深い。

  世界遺産に登録される旧市街グラン・ディルは、大聖堂のゴシック建築やコロンバージュ(木組み)のアルザス伝統建築が美しく保存されており、欧州議会を始めEU機関が集まるヨーロッパ区には、現代建築が建ち並ぶ。そういう新古の2つの性格が調和するストラスブールの街にふさわしく、ホテル「クール・デュ・コルボー」には、ルネサンス建築と今日のデザインが、コントラストを描きながらも矛盾することなく調和している。宿としての創業が1528年というから、ヨーロッパで最も古いホテルの一つに数えられる。「クール・デュ・コルボー」は、アルザス地方に残る木組み建築の中でも屈指の美しさだ。また4ツ星のラグジュアリーホテルで、全てが木造建築というのもかなりの希少価値だろう。

  ストラスブールの中心から、コルボー橋(中世には犯罪者を袋にいれてこの橋から川に投げたという)を渡って、イル川河畔のコルボー広場の小さなアーチをくぐり抜けるとホテルの中庭へと通じる。広場側からは、ここを入ると本当にブティックホテルが現れるのか、ちょっと心配になる面持ちだが、、。クプレ通り側のメインエントランスは、種類の違う木のパネルがリズミカルにアレンジされたモダンなファサードの建物だが、中庭側から入った方がずっと強烈な印象だろう。コルボーとはカラスのことだそうで、コルボー橋はカラス橋、コルボー広場はカラス広場、「クール・デュ・コルボー」は“カラスの中庭”となり、なんだかカラスだらけだが、カラスのお宿だったわけではなく、ホテルの人にもカラスになった確かな理由はわからないそう。

  建築コンプレクスは、1930年から歴史的モニュメントに指定されており、ストラスブールで必見の観光名所に挙げられることも多く、滞在中はホテルの中庭の見学に訪れる観光客にも何度か出会った。ゼラニウムの赤い花が欄干やバルコニーを鮮やかに飾り、中庭からの眺めは絵葉書そのままの光景だ。中世からの時代を経て、曲がったり傾いたりした木造建築が、夜になりライトアップされると神秘的でさえあり、螺旋階段や渡り橋や窓枠が動き出すかのようでもある。

  「クール・デュ・コルボー」は、個性的なブティックホテルのコレクション「Mギャラリー」のメンバーでもある。Mギャラリーはアコーホテルズの新しいラグジュアリーブランドで、英国出身の個性派女優クリスティン・スコット・トーマスがブランド大使を務める。今はストラスブールの「クール・デュ・コルボー」なわけだが、16世紀の昔は神聖ローマ帝国の時代だったので、ドイツ語でシュトラースブルクの「ツム・ラッペン(黒馬)」と呼ばれる宿屋だった。3世紀に渡り由緒ある宿として知られ、モーツァルトやリスト、アレクサンドル・デュマもゲストに数えられ、プロイセンのフリードリヒ大王やオーストリアの皇帝ヨーゼフ2世もお忍びで滞在したものだった。しかし1852年に閉業となり、教会のステンドガラスなどで有名だったオット兄弟のガラス工場へと用途は大変した。このホテルの建物で100年以上にも渡り、戦争時にもガラス職人が働いていたとは今は想像もつかない。そのガラス会社も閉鎖され、1982年にストラスブール市が不動産を買い上げるが適切な利用案もなく、建物は空き家のまま次第に荒廃してしまう。あまりにも厳格な歴史的モニュメント保護法下の条件がネックとなり、ホテルプロジェクトもなかなかうまく行かなかった。このままでは建築文化遺産が廃墟になると、「クール・デュ・コルボー」の救世主がやっと現れたのが2006年。売価70万ユーロで投資額が約1500万ユーロと聞く。2007年に根気のいる気が遠くなるような修改築作業を開始して、2009年5月にブティックホテルとして再誕生する。

  プロジェクトを指揮したのはパリの建築家ブノワ・ポーセル(LPAアーキテクツ)。可能な限りオリジナルの建築要素が残され、再利用不能な状態のマテリアル、破損部分は同様の古材を探して使ってある。木の支構造は、ほぼ全てのオリジナルを特殊な樹脂加工を施し、強化して保存した。例えば屋根瓦の不足分は解体される運命にあったアルザス地方の古い家との同じ色合いの屋根を再利用している。暖房や温水はエコロジカルに地熱発電だ。部屋の扉は昔からのトスカーナレッドに塗装された。ルネサンス時代には雄牛の血で赤く塗装されていたとのことだが、この伝統はまさか受け継いではいない。

  ホテル内をいろいろ探検し歩くと好奇心旺盛のゲストとしては、様々な発見が多く楽しくて仕方ないが、廊下の途中で変に曲がっていたり、突然段差があったりで、ふと清掃担当スタッフのことが頭に浮かんだ。階段も多いし、清掃用カートでは動けないような廊下もあるし、通常以上に体力と手間が要求されるに違いない。本当に毎日ご苦労さまです!

ロビーラウンジに続くサロン。

通りに面したエントランス。幾何学的な木のパネル模様のモダンなファサード。

エントランスのベルベットのシッティングコーナー。

レセプション。

レセプションの裏側。


レセプションとロビーラウンジの間、地下への階段。
朝はブレッックファースト・ルーム、午後はティールーム、夕方からはシックなバーになる。ルネサンス時代の文様が随所にアレンジされる。
コルボー広場側から入って中庭右手の高床式の棟。下階にはガラス張りでホテル建築の写真が並ぶギャラリー&ラウンジ空間。
階段室のディティール。

中庭の渡り橋に繋がる階段室。

客室階の廊下。中世の迷宮の感じ。

ドアは独特のレッド。

全57室(うち19室がスイート)。インテリアはコージー&ロマンチック。このデラックスルームではルイ15世ロココ調の家具がコンテンポラリーに解釈され、真紅のベルベットがカラーアクセント。床はオーク材の上質なパルケット。ランプにあしらわれた鳥のメタル彫刻から朝はさえずりが聞こえるよう。街で買ったマカロンのパステルカラーがとてもマッチ。

部屋のフロアの右手にトイレ、左手にデラックスなバスルーム。錆びたアンティークのメタル感触のタイルが建物の長い歴史を反映。
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