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超個性的な世界のスター・クリエーター達がマドリードのホテル「プエルタ・アメリカ」を舞台に大共演。育った文化背景も造形言語もデザイン哲学も全く異なる19の建築家やデザイン・オフィスが参加した奇蹟的なホテル・プロジェクトだ。この5ツ星のデラックス・ホテルはそれ自体がデザイン・ミュージアムの常設展のよう。一つの決められた具体的なテーマに従って参加デザイナーがイメージを膨らませホテル空間に融合されるのでなく、“夢を見る空間”という漠然としたテーマのみでデザイナーに完全な表現の自由が与えられ、各々のデザイナーが他を考慮することなく饒舌に自己を語り絶対的な個が併存している。最後までデザイナーはライバルのデザインを知る事はできなかったという。2005年夏のオープニングの前日に現地入りした7F担当のロン・アラッドはデジカメでホテル内の写真を取り巻くっていたとか。“デザインホテルのあり方に新次元が開かれた”“ホテルデザインの可能性が無限に広がった”と各国のメディアでも絶賛された。一種のデザイン巡礼地ともなりデザイン・フリークならずともマドリードで必見の場所になっている。
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「プエルタ・アメリカ」はスペインの意欲的なホテル・チェーン「シルケン」(1995年に3件のホテルからスタートし急激に成長)が、ビルバオの「グランホテル・ドミネ」(ハビエル・マリスカル設計)やバルセロナの「ディアゴナル」(ジュリ・カペラ設計)に続いて実現させたデザイン・プロジェクト。デザインホテル・ファンの夢だけでなく、シルケンのアントン・イラクリス会長の夢も現実になったわけだ。本来はロンドンの美術商でアンダーステイトメントな英国紳士の典型といった風貌のマイケル・リッチ氏がキュレーターとしてこのプロジェクトの陰で活躍した。総床面積34000m²の建築には7500万ユーロ(建築家のキャリアや知名度には関係なく各階毎の工費は均一)が費やされた。プエルタ・アメリカと同じ戦略で次のホテルも計画中かと期待するとそうではない。ノーマン・フォスターの設計になるロンドンの新しい5ツ星ホテルがオープニングを控えているが、マドリードとはまた全然違うスタイルになるそうである。
マドリードの北東部、バラハス空港と街を結び交通量の多いアメリカ通りに黄色、オレンジ、赤、紫と色鮮やかにグラデーションするファサードが現れる。ガラスの箱の建物本体はお世辞にもイノベイティブとは賞賛できないが、ホテル設計ではベテランのフェリペ・サエス・デ・ゴルドア(Felipe Saez de Gordoa / SGA Estudio)のコンストラクションになる。そのお化粧と言っては悪いかもしれないが、ジャン・ヌーヴェル(Jean Nouvel)のファサード・デザインからポジティブな驚きが連続のデザイン発見ツアーが始まる。全部で500シート、14色の日除け(PVCコーティングのポリエステル製)がカラフルな鱗か鎧のように建物をカバーする。裏側はブルー・トーンで統一。様々な言語でポール・エリュアール(Paul Eluard 1895ー1952)の詩「リベルテ(自由)」からの引用がファサードを満たす。フランスのシュールレアリスト詩人が第二次世界大戦でナチスドイツへのレジスタンス運動に加わっていた頃のメッセージ性の強い詩だ。 |
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車で来なくても忘れずに見学したいのが駐車場(644台収容)。地下1Fはオレンジ、赤、黄色、2Fが光沢あるブルーに塗装されている。ファサード同様にエリュアールの自由に捧げた詩にインスパイアされて、イタリアの建築家テレサ・サペイ(Teresa Sapey)は駐車場にエモーションを移植した。壁に記された詩句はグラフィックとなり、出口やエレベーターも案内するサインも造形する。雲の上の詩人エリュアールの意にそぐうかどうかはわからないが、ファサードと駐車場のデザインには効果抜群だ。 |
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客室フロア12階、1階のロビー、レストラン、バーと各々が別のデザイナーに委ねられた。エントランス・ホールとロビーはミニマリストの建築家ジョン・ポーソン(John Pawson)の才腕になる。修道院の静けさがマテリアル化したようなデザインだ。レセプションは独特の半円の木のストラクチャーに目隠しされ、ロビーにいるゲストにはレセプションの忙しさが直には見えない視覚の平穏が確保された。京都の宿にあっても不思議ない。木の椅子に腰をおろし水音を聞きながら到着までの旅の疲れを癒す。 |
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レストラン「ラグリマス・ネグラス」(Lリットル rimas Negras=黒い涙)はスペイン文化に造詣の深いデザイナー、クリスチャン・リエーグル(Christian Liaigre)がガリシア、カタロニア、アンダルシアの地方文化をミックスしてデザインした。スペインの民族文化がコンテンポラリーに新解釈される。カウンター席の抽象的なアラベスク模様が内側からの光で影絵のように浮かび上がる。キッチンと客席をセパレートするアルミニウムとガラスの迫力あるワインセラーには4000ボトルをキープ可能だ。 |
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スペイン語で大理石を意味するマルモルから名前が付いているのに納得だが、マーク・ニューソン(Marc Newson)がデザインした「マルモ」(Marmo)バーは8〜9mもあるイタリアの大理石の一枚岩のカウンター(重量6トン)がドラマチックに空間を切断する。六角形のチェアは B&B Italia社のプロデュース。そして400ものレーザーカットされたアルミニウム板が天井まで7mの高さで壁を覆い空間にリズムを生起させる。夜はそのメタリックなストライプ間から光の色が洩れてまた別の雰囲気が出る。 |
最上階のスイート12室を含めホテルは各階30室で全342室。4台のパノラミック・エレベーターがファサードの中央をザハ・ハディド・ワールドからロン・アラッドワールドへと昇り降りする。各階毎にエレベーターを出るとラウンドなロビー。そこから左右に客室への廊下が伸び、両端にジュニアスイートが設けられた。キャラクターの強いクリエーターが揃っただけに、各人のパーソナリティーも既に各階のロビー空間からダイレクトに伝わる。デザイナーの姿が浮かび声が聞こえてその場で対話している気になってくる。
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