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yoo by Starck

2008.03.17

yoo

yooは1999年にジョン・ヒッチコックスとフィリップ・スタルクで設立。フィリップ・スタルクがクリエイティブ・ディレクターを務めている不動産開発会社。


Philippe Starck

フィリップ・スタルク(1949〜)
フランス・パリ生まれ。パリの装飾美術学校で学んだのち、ピエール・カルダンのメゾンに入社、家具デザインを担当。1980年アメリカで、スタルク・プロダクト社設立。スタルクは、インテリアをはじめあらゆる分野のデザイン活動を網羅しつつ、建築家としても活動しており、世界で最も注目され、活躍するデザイナーの一人です。


ハーフェンシティのマルコポーロ・テラスから見たダルマンカイ (かつての埠頭の名前) のマンション群。

ロンドン、ニューヨーク、マイアミ、ダラス、ブエノスアイレス、シドニー、コペンハーゲン、テルアビブ、香港、パナマ、、、デザイン界のスーパースター、フィリップ・スタルクとのコラボレーションでハイエンドなデザイン・マンションを開発し大成功を収めているyoo社。ファッションメーカーでもない不動産開発がインターナショナルな高級ブランドに発展する可能性があるとはそれまで誰も予期していなかっただろう。20万ドルのブルガリアの地中海リゾートマンションから500万、1000万ドルというニューヨークのマンションまで、「yoo by Starck」のブランドで既に8000を越えるマンションがデザインされ、世界20ヶ国に進出し新しいプロジェクトも続々進行中だ。

yooは1999年にジョン・ヒッチコックスとフィリップ・スタルクが不動産業界のドリームチームを組んで設立された。ヒッチコックスは英国ナンバーワンの不動産開発王で、スーパーモデルのエル・マクファーソンとの恋仲が話題になったこともある。1990年代に「マンハッタン・ロフト・カンパニー」を立ち上げ、ニューヨークのロフトに倣って古いインダストリー建築を改造しクールでミニマル、禅趣味な住空間を提供するビジネスで名を成した。ロフト・ブームの時代を振り返ってこんなことを語っていた。「ロフトは写真では見た目はいいけれども、実際に暮らすには暖かさが不足していた。建築家は家を外側からデザインするから、外から見て見栄えするインテリアになる。でも住人は家の中で時間を過ごし、住人の視線は建築家の視線と逆に内から外へ向けられる。今、私達は内側から住まいをデザインしている。」

2004年にはジェイド・ジャガー (ミック・ジャガーの娘で英国王室御用達の高級ジュエリー「ガラード」のクリエイティブ・ディレクター) もコンセプト・デザイナーとしてyooのチームに迎えられた。ヒッチコックスは「今の時代は消費者がプロダクトにアイデンティティーを求めるのでなく、パーソナリティーに求める。憧れの対象、模範となる人物が好むものを消費者も好むのが顕著だ。」とトレンド分析するように、時代を先読みする第六感が驚異的に鋭い。例えばドイツでは高級マンション購買層を対象にしたリサーチではスタルクの知名度が64%との調査結果が出ている。スタルクは一般に非常にポジティブなイメージがあり、“個性” “信望” “完璧な造形” “ライフスタイル”等がスタルクのデザインから連想される概念と答える人が多い。スタルクのデザインを買うだけでなくスタルクのデザインからあふれる生きているという実感、生活感情を住空間にも求めてyooのマンションを買う人も少なくないのだろう。

エントランス、ロビー、エレベーター、フロア、ウェルネス&プール・ランドスケープ、階段室等のマンションビル内の住人共用スペースはもちろんスタルクのデザインになる。子供の遊び場もスタルク・デザインだ。こうした共用スペースが予測していた以上に頻繁に利用され、住人同士のコミュニケーションを促し隣人関係にも好影響を及ぼしているため、新しいプロジェクトでは共用空間のスケールアップに努めているということだ。ロビーはスタルクが「君にはあらゆる可能性がある」と住人に呼びかけ「ポジティブでオープンな気持ちで一日の活動をスタートできるよう応援する」ようなデザインを目指したと言う。

yooのマンションではインテリアの基本に4つのテーマが用意されている。スタルクが「より美しく生きたいと望み、精神的に生き生きしている“スマート族”」のために考案したインテリアのマスターメニューである。これはしかしマンション購入者にインテリアのオリエンテーションを与えるもので、各テーマをミックスしてもいいし、各人の希望でどこまでスタルク・インテリアにするかは自由だ。スタルクは自身の役割を「マンション所有者の恐らく人生最大の投資をサポートする友達」と理解している。「デザイナーにマイホームをデザインさせると住む人間が住みたくなくなるつまらないマイホームになる。僕がマンションをデザインするのでなく、僕の空間とプロポーションに対する感覚で所有者のお手伝いするだけ」と。

さて4つのスタイル提案だが、「クラシック」はフランスの田舎の貴族風で、コスモポリタン且つアットホームな雰囲気、「ミニマル」はクリアー、ピュア、シンプル、エレガントで落ち着いた雰囲気、「ネイチャー」は石や木の天然素材を使ったスカンジナビア風の暖かい雰囲気、「カルチャー」はベルベットのカーテン、クリスタルのシャンデリア、カラフルな壁、バロック調のエキセントリックでゴージャスな雰囲気。バスルームやトイレもスタルク尽くしだが、スタルクのデザインホテルのバスルームよりも完成度が高い。

スタルク自身は「カルチャー」のスタイルが自分には一番居心地がいいそうだ。スタルクは世界中に20マンション持っていて、全部インテリアが同一で、グローバルなノマド生活をこなすにはどこのマンションの扉を開けても全て同じインテリア、同じ愛読書、同じ衣服が揃っていることがポイントだとか。

ドイツではケルンのヴィヴァコン不動産開発会社とロンドンのyoo本社とのジョイントベンチャーで2003年に「yooドイチュラント」が設立された。昨年第1号プロジェクトがハンブルクのウォーターフロントのニュータウン「ハーフェンシティ」に実現した。ハーフェンシティはハンブルクの将来をかけた今ヨーロッパで最大規模のニュータウン建設事業で、yooはエルベ河に浮かぶ細長い島のような旧ダルマン埠頭に67マンションを建設。エルベ河の流れ、対岸の港のシルエットを眺められ、豪華クルーズ船が目の前を走り抜ける。すぐ近くにヘルツォーク&ド・ムーロンの設計でハンブルクの新しいランドマークとなるべきコンサートホール「エルプフィルハーモニー」が君臨する。yooの物件はスタルクのインテリアだけでなくそのロケーションも格別なのである。

ヨーロッパでもフランスやイタリアは国民性の違いもありyooの進出は難かしいと言われる。ドイツ人も個人主義が強くyooのスタイルが容易に受け入れられるかどうかかすかな疑問もあったのだが、ハンブルクの時も期待以上の反響で着工前の段階で既に30%が売約済み、竣工を待たずに完売になった。今年はミュンヘンのプロジェクトが入居可能になる。続くプロジェクトはデュッセルドルフでライン河に面した歴史あるプロムナードに50マンションを設計。次はベルリンのベルトルト・ブレヒト広場に面した120マンションのテラスハウス、今年の秋に着工し2010年の完成予定。ミュンヘンでは一等地のタールキルヒナー通りにある歴史建造物保護法下の建物がリニューアルされた。古い井戸が残り味わいある中庭を持つ19世紀の古典的なファサードの館だ。このプロジェクトのプレゼンテーションに顔を出した後、スタルクはプライベートジェットで電気も何もない小屋だけある孤島に飛んで行った。スタルクほどになると究極の贅沢とは贅沢不在の一日を過ごすことなのだった。

文責/小町英恵


スタルクのインテリアだけでなく、建築もユニーク。設計:SML Architekten











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