デザイナーのためのヨーロッパホテルガイド 〜水まわり編〜 Vol.57

ローグナー・バート・ブルマウ(オーストリア・ウィーン)

2008.06.09

Rogner Bad Blumau

Add: A 8283 Bad Blumau 100
Tel: +43 (0) 3383-5100-0
Fax: +43 (0) 3383-5100-808
E-mail: spa.blumau@rogner.com
URL: http://www.blumau.com
Design: Friedensreich Hundertwasser

バート・ブルマウの自然の中の温泉リゾートホテル。芸術家フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー(1928-2000)のメルヘンのような建築コンプレクス。




ゴールドに輝く玉葱屋根がシンボルの「シュタムハウス」にはレセプションとダブル47室。





「ツィーゲル(煉瓦)ハウス」にはダブル100室。バート・ブルマウ村の廃屋になった古い農家の煉瓦材をファサードに再利用。




ファサードに石を使った「シュタイン(石)ハウス」にはスイート47室。

「楽園は探してみつかるものではない。自分の創造力を駆使し自分の手で築くもの、、、」オーストリアの芸術家フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー (1928年−2000年)は人間と自然が調和するパラダイスを創造するために闘い続けた。オーストリアはシュタイヤーマルク地方の小さな温泉郷、人口も1500人というブルマウ村でフンデルトヴァッサーが長年夢見た「丘陵草原の国」がスパリゾートホテルの形で現実になっている。ウィーンからなら南へ130km、グラーツからなら北へ60km、スロヴェニアの国境にほど近い。アウトバーンを降りてガタガタと田舎道をひとしきり走ると、かぼちゃ畑の向こうに数えきれない色と形に構成される不思議のホテル建築が見えてくる。まさにメルヒェンの世界に迷い込んだかに。

このホテル「ローグナー・バート・ブルマウ」は1997年にオープニングした。フンデルトヴァッサーが「このパラダイスはオーストリア国への贈り物」と祝辞を述べたプロジェクトだ。ブルマウを訪れるのは初めてではない。10年前に比べて客室棟も温泉施設も増え、見学だけの団体観光バスの到着も増えた点は変わっていたが、フンデルトヴァッサー建築は10年前と変わらない魅力で迎えてくれた。

フンデルトヴァッサーは自分のことを建築家ではなく「病んだ建築を癒す医者」と定義していた。ホテルはその外観を目にする瞬間から都会人を癒してくれる。オーストリアのベスト・スパ施設にも選ばれているが、心身共に完全に日常生活から解放され知らぬ間にストレスが消えメタボリックシンドロームもおさらばという気持ちになってくる。バート・ブルマウの温泉水は2種類あり、メルヒオル温泉は47.2℃で970mの地下から出る。ヴルカニア温泉は2843mの深さから110℃で地上に出る。100万年以上も前にできた火山地帯の内海の水を採掘作業で幸運にも発見した。それは絹の衣に包まれるかの肌触りの水だ。温泉はまたホテル用の発電、暖房に応用されエコなエネルギー源でもある。

ローグナー・バート・ブルマウは中心に温泉浴場、そこから宿泊施設、飲食施設、ヘルスケアセンター等様々な機能のデザインを異にする建物がランドスケープに広がる。玉葱屋根のシュタムハウス(本館)でチェックイン。客室はこんなユニークな建物に配分されている。ブルマウ村の古い農家の煉瓦を再利用したツィーゲルハウス(煉瓦の家)、ウィーンの観光名所でもあるクンストハウスに似ているクンストハウス(芸術の家)、ファサードに天然石を使ったシュタインハウス(石の家)、地下にありながら中庭から自然光がたっぷり入るワルトホーフハウス(森の中庭を持つ家)、目の形をしたアパートのアウゲンシュリッツ(切れ長目)。屋根は緑化されその上からはパノラマ風景を楽しめる。

職人の個性を建築に浸透させる施工法もフンデルトヴァッサー建築の特徴である。現場での職人の仕事への喜びが完成した建築に魂を宿らせると考える。カラフルなセラミックのファサードや柱はもとより客室のバスルームの壁や床でも顕著なように、ディティールの仕上げは職人のクリエイティビティが限界まで引き出される。独特の表面光沢を持つセラミックはドイツのバート・エムスにあるエービンガー家の建築用セラミック専門工場でハンドメードされている。2700ものカラーバリエーションが可能だそうだ。

角のないソフトなフォルム、曲線だらけの足もとも多少不安定な環境は人間が心のバランスを取り戻すのを促してくれるかのようだった。フンデルトヴァッサーにはウィーンのクンストハウスでお会いしたことがあるが、話し振りも建築のように柔らかかった。氏は晩年のほとんどをニュージーランドで過ごされたが、一度雑誌の特集用にメッセージの執筆を御願いした時にニュージーランドからのファックスが深夜にラッタッタと入ってきた時の感激は今でも忘れられない。氏はニュージーランドの自庭のチューリップツリー(百合樹)の下に眠っておられる。

ホテルの自然環境もフンデルトヴァッサーの讃えた植物や樹木の宝庫だ。今年はフンデルトヴァッサーの生誕80周年記念に150本もの椰子の木も仲間入りした。施設内の公園を散歩しているとまだ樹齢の若い木が並ぶのが目についた。それも記念プレート付きで。ほんの数日前に植樹された日付けの木も。愛の象徴である林檎の木。に、光・若さ・感性を象徴する白樺。ホテルで結婚式を挙げたカップルが記念に自分達の木を植樹したのだった。銀婚式でもよければ植樹させてもらいたくなった。







「クンスト(芸術)ハウス」にはダブル100室。
「アウゲンシュリッツハウス」目の形をした13のアパートメント。

地下アパート「ヴァルトホーフハウス」中庭からアパートに十分な自然光が入る。




ホテルの客室棟は屋上も緑化され自然とハーモニー。