デザイナーのためのヨーロッパホテルガイド 〜水まわり編〜 Vol.63

クラリオン・ホテル・サイン( スウェーデン・ストックホルム )

2009.02.16

Clarion Hotel Sign

Add:  Östra Järnvägsgatan 35, Box 310, 101 26 STOCKHOLM
Tel: +46 (0)8 676 98 00
E-mail:
cl.sign@choice.se
URL:
www.clarionsign.com

シャープな建築のクラリオン・ホテル・サインはストックホルム最大のデザインホテル。(設計:Gert Wingardh)ホテル前の広場は再開発工事中。

石の肌を感じさせるレセプションカウンター。

エントランスホール、ロビーからアルネ・ヤコブセンの椅子が歓迎してくれ、北欧デザインの香りがいっぱい。

ロビーから右手に続く「ロー・バー(Raw Bar)」。お馴染みのアルネ・ヤコブセンのセブンチェアはバーカウンター・スツールのバージョンも素敵だ。フィリップ・スタルクの可愛いペンダントランプとマッチ。



朝食はレストラン「アクアヴィット・グリル」で。ニューヨークで人気のモダンな北欧料理の店がヨーロッパに初登場。通りに面したスペースの客席は黒いセブンチェアにスタルクのデコラティブなガラスの照明でコントラスト。

私が住んでいるハノーファーの街のカフェやレストラン、ミュージアムなどでも北欧のモダンな椅子にお目にかかることはあるけれど、やはり北欧の現地で北欧のデザインに触れると同じ椅子でもよりオーセンティックに感じられてくる。去年の2月にオープンしてまだ新しい「クラリオン・ホテル・サイン」は北欧デザインの魅力を満喫できるストックホルム最大(客室数:558室)のデザインホテルだ。

ストックホルム中央駅や空港と市内を結ぶアーランダ・エクスプレスの駅から歩いてすぐと便利なロケーション。中央駅から北へ伸びる線路と、ストックホルム市が新しい公園に再開発中のノッラ・バーントリエット広場の間に建てられた。ベルリンやワシントンのスウェーデン大使館を一任されるなど、スウェーデンを代表する建築家ゲルト・ヴィンゴード(Gert Wingardh)によるスペクタクルで研澄まされた刃のような建物。広場側へはガラスのオープンなファサードだが、線路側は騒音防止も考慮して一つも窓がなく、ファサードは表面加工が異なりキャラクターが違う黒い御影石を組み合わせとても彫刻的だ。表面がラフな明るいトーンの御影石は雨が降ると濡れて黒くなったり、光の具合、四季折々の天候の具合でファサードも微妙に変貌していく。

インテリアのクオリティーも建築のクオリティーに肩を並べる。(デザイン:Lena Arthur)時と共に古くさくなっていくのではなく、年季が入ってより美しくなるホテル空間を目指したという。北欧デザインの歴史を築いた巨匠の家具や、その伝統を受け継ぎながら今現在活躍中のトップデザイナーの家具の数々が全館にあふれる。ロビー、「アクアビット・グリル&ロー・バー」、バンケットホール、コンファレンス施設、そして9Fから11Fまでの客室はアルネ・ヤコブセンへのオマージュという印象で、デンマークのデザインが主役を務める。2Fラウンジではヤコブセンの椅子とデンマークの新世代デザイナー、モーテン・ヴォスの椅子が対話する。どちらも知的なユーモアがあり使う人間のファンタジーをくすぐるデザインだ。

客室は各階毎にテーマの国によってインテリアが異なり、例えば6Fはアルヴァ・アアルトの家具でフィンランド・ルーム、5Fがノルウェー・セイズの家具でノルウェー・ルーム。4Fが今回私が泊まったスウェーデン・ルームで、ブルーノ・マットソンとグニラ・アラードの椅子が待っていた。アラードは昨年国際デザインフェア旭川のコンペ審査員に招聘されたり日本でも評価が高く、彼女のシネマ・シリーズは実に機能と美しさのバランスがパーフェクトな家具だ。部屋には各々の国を象徴する白黒写真も壁を飾る。照明はフロス社(伊)が部屋の家具と調和するようホテルのために特別に光のトーンをクリエートした。バスルームはとても明るくガラスのシンクからマテリアルや色の組み合わせもジェントルな雰囲気で、バスルームへのガラスのドアを90°開ければトイレのドアを閉める結果になるという一石二鳥のアイデアがユニークだった。このホテルで初めてスウェーデンの伝統あるDUXのベッドで眠る機会を得た。ドバイの海上の超贅沢なホテル「ブルジュ・アル・アラブ」にもセレクトされたくらいだから、さすがに寝心地は7ツ星であった。

屋上温水プールも完備しているスパは宿泊料金とは別途だが、スパのロビーから建物突端の屋上テラスへは出ることができた。バスローブでスパークリングワインを飲みながらリラックスしている人達の前を「ちょっとすみません」とダウンコートを着たまま横切って。1960年代のアイコン的なバブルチェアが吊り下がる。フィンランドのエーロ・アールニオがデザインした透明アクリルのシャボン玉のような椅子が揺れる。あの頃の宇宙への憧れが揺れているかに。アポロ11号人類初の月面着陸にフィーバーしたのを懐かしく思い出しながら、目の前に広がるストックホルムの光景をユラユラと揺れながらしばし眺めるのだった。



内側のレストランスペースは吹き抜けの3角形、照明もファニチャーもより温かさを強調。上のコンファレンス・フロアから見るとなかなかスペクタクルな眺め。


コンファレンス・フロアの壁も北欧デザインへのオマージュ。アルネ・ヤコブセンの椅子のアーティスティックな白黒写真が壁紙だ。

コンピュータコーナー。
広場への眺めがいい3Fのラウンジ。
アルネ・ヤコブセンのエッグチェア、黒のバージョンは存在感が強い。三角形のラウンジ空間の突端部。

デンマークの新世代デザイナー、モーテン・ヴォスの赤いラウンジチェア「アティテュード」が壁の写真と絶妙にマッチしている。

コンファレンスフロアのパブリックトイレ。ドアの紳士用のメタル製マーク。

小便器間の波状のパーティションがユニーク。

壁のタイルやドアもブラックで統一。

傾斜させた石板が手洗いのバサン。

屋上のセルマ・シティスパのレセプションホールからルーフテラスに出られる。エーロ・アールニオのバブルチェアで宙に揺れながらストックホルムの街を見渡せる。
線路側のホテルの建物のファサードは窓がないのがわかる。表面加工が異なる御影石がストライプを描く。

階段も石素材の組み合わせがいい。

4F(部屋番号は3で始まるが)の客室のドア。