デザイナーのためのヨーロッパホテルガイド 〜水まわり編〜 Vol.87

シャングリ・ラ ホテル ザ・シャード ロンドン (イギリス・ロンドン)   1

2014/11/04

Shangri-La Hotel, At The Shard, London

Add:31 St Thomas Street, London, SE1 9QU, United Kingdom
Tel:(44 20) 7234 8000
Fax:(44 20) 7234 8009
E-mail:info.slln@shangri-la.com
URL:http://www.shangri-la.com/jp/london/shangrila/

「シャングリ・ラ ホテル ザ・シャード ロンドン」は72階建ての「ザ・シャード」の34階から52階を占める。

本当に感動してしまう眺望だ。ロンドン初の高層ホテル「シャングリ・ラ ホテル ザ・シャード ロンドン」は、パブリックスペースやゲストルームから、今までロンドンのどのホテルでも経験することは不可能だった未知のロンドンの絶景を堪能させてくれる。観光に出かけなくても、ホテル内の様々なアングルからロンドンを眺めているだけで大満足な一日を過ごせそうだ。ロンドンに住んでいる人の宿泊希望も少なくないというのにも頷ける。自分の街をシャングリ・ラから新しい視点で再発見できるのだから。

このホテルは香港を拠点にラグジュアリーホテルを世界に展開する「シャングリ・ラ ホテルズ & リゾーツ」が、110ミリオンユーロを投入した意欲的事業だ。レンゾ・ピアノの設計で310メートルの高さを誇り、西ヨーロッパで一番高いビル「ザ・シャード(破片)」に今年の5月6日にオープンした。ロンドンブリッジ駅に直結し、テムズ川南岸のほとりに位置する地上87階建て(実際72階の展望台まで使用可)で、総ガラスファサードの教会の尖塔のようなビルだ。ホテルは、34~52階の18フロアを占める。セント・トーマス・ストリートに面するホテル専用のエントランスから、アジアンテイストとヨーロッパモダンが融合した独自のエレガンスを醸し出すラウンジを抜けて、35階「スカイロビー」まで直行する高速エレベーター(28秒で125m上昇)に乗る。

ロンドンの21世紀の新しいランドマークたる建築から、テムズ川のうねりに添ってタワーブリッジ、ロンドンタワー、シティホール、テートモダン、ミレニアムブリッジ、セントポール大聖堂、更にはビッグベンと、ロンドンの象徴的な景観とディテールも明瞭に眼前に広がる。しかしなんといっても忘れられないのはタワーブリッジを見下ろす眺めだった。小雨に降られてちょっと残念と思っていると、雨上がりにタワーブリッジの上空に薄らと大きく虹がかかっているではないか。そうするうちに日が沈んでいくと、遠くの高層ビルに灼熱の光が反射している。夜にはライトアップされたタワーブリッジの中央部分が跳開し、大型船が通っていくシーンも。よく100万ドルの夜景というがこれはロンドンだから“100万ポンドの夜景”になるのだろうか。

とにかくファサードの向こうの光景が印象的すぎて、ホテルのインテリアやアートに着目する余裕がなく、担当デザイナーには申し訳ない気がしないでもない。アジアンとブリティッシュ、コンテンポラリーアートと伝統美術工芸が拮抗することなく静かに対話し、堅苦しさとか気取りのないとても心地よい5スターのホスピタリティー空間に仕上がっている。

「人生を謳歌しデザインも謳歌する」ことをモットーに、香港を拠点に幅広く活躍し、アジアデザイン界に君臨するライフスタイル・デザイナー、スティーブ・ラング(Steve Leung)が34階のイベントフロア、35階のラウンジ & レストラン「ティング」(中国語でリビングルームの意)、客室フロアを手掛けた。ホテル最上の52階、ロンドンで最も高い場所にあるバー「ゴング」 & インフィニティ・プール「スカイプール」のデザインには香港出身ケンブリッジ大建築学部卒、有望な若手として注目されるアンドレ・フー(Andre Fu)が起用された。デザインは木製の升を組み合わせ、多くの木造建築に使われてきた「斗栱(ドウゴン)」からインスピレーションされたという。夜はプールもバーのインテリアになる。

レストランの白いテーブルクロスからこんなエピソードが思い出された。それは2000年のベルリンでのこと、ポツダム広場のレストランでディベロッパーとの食事の最中に、レンゾ・ピアノにアイデアが閃めいた。建築家はリネンのテーブルクロスにスケッチし始める。それがザ・シャードのデザイン誕生の瞬間だったのだ。

全202の客室は36階から50階に位置。少し料金が違ってくるが、その代わりに食事をホテル筋向かいのマクドナルドのハンバーガーにしてでも、テムズ川が見えるロンドンシティビューの部屋に限る。建築が建築なので各々の客室が独特なレイアウトでデザインされた。私達の部屋のインテリアに限っては、ベッドからTVが見えるようにとのことだろうが、TV用ファニチャーがタワーブリッジの見えるベストビューの左側ウィンドーの前にどーんと配され、せっかくロンドンに来てまでTVを見る必要のない者には残念であった。まあでも右側ウィンドーからでも十分に眺められる。そこで右側ウィンドー前のこれも不要な什器のヴァレットスタンドをよいしょと動かして、コーナーのソファのクッションを外してウィンドー前の床にタワーブリッジ鑑賞お座敷を即興アレンジし、タワーブリッジに向けスパークリングワインで乾杯した。

バスルームにTOTOのウォシュレットがあるのをヨーロッパのホテルで発見したのは初めてで、日本で使ってからもう8年振りと大喜びすることとなった。木綿のさらりと肌触りのいい浴衣が用意されていて、これもヨーロッパでは初めて出会ったサービス。早速プールへ、ヘニングさんとお揃いで浴衣を着て行った。エレベーターで一緒になった他のゲストに「クール!」と褒められて赤くなってしまった。生まれて初めて浴衣をパジャマにして眠ったヘニングさんは、なぜかゾウの大群がテムズ川を楽しそうに泳いでいる夢を見たそうだ。

306メートルの高さを誇る「ザ・シャード」をテムズ川対岸から見る。

セント・トーマス・ストリートから見上げる夜の姿。

写真では見えにくいかもしれないが、「ザ・シャード」の上空に大きな虹がかかった。

ホテル専用のエントランスはセント・トーマス・ストリートに面する。

エントランスホール。デザインと美術品にアジアと英国、現代と古典が調和。

ドラマチックなガラスの光。