HOTEL GUIDE ホテルガイド

文化ジャーナリスト小町英恵 (早大独文卒) とハノーファーの新聞社で文化部長を務めるヘニング・クヴェレン (ハンブルク大卒、政治学修士) 。夫妻で続ける音楽とアートへの旅の途上で体験した個性派ホテルをご紹介いたします。

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3件

2009/05/01

ホテル・リヴァル( スウェーデン・ストックホルム )

連想ゲームで"スウェーデン"とヒントを出されて即座に"アバ (ABBA) "と答える人も少なくないのではないだろうか。アバは1970年代、私もまだティーンエージャーだった頃に次々と大ヒットを飛ばし世界を冠した伝説的なスーパーグループ。特にアバのファンだったわけでもないのだが、アバの元メンバー、ベニー・アンダーソン (Benny Andersson) がオーナーのホテルがあると聞いては好奇心を押さえられず、「ホテル・リヴァル」に1泊せずしてスウェーデンを去るわけにはいかなかった。 リヴァルは2003年にストックホルム初のブティックホテルとしてセーデルマルム島のトレンディな地区にオープンした。緑の茂る広場マリアトリエット (Mariatorget) に面する。1937年のアールデコの建築「リヴァル・シネマ」がオリジナルの魅力を壊さないように改増築された。 (建築:Bergkrantz Arkitekter、インテリア:Ahlgren Edblom Arkitekter) 階段のエレガントな手すりやカクテルバーの半円のカウンターなどの造形要素が歴史を垣間見せる。「リヴァル・シネマ」はストックホルムにそれまでなかった類いのアーバン・プロジェクトで、映画館、ホテル・アストン (Hotel Aston) 、カフェ&レストラン、パティスリー、アパートが複合し最先端の施設だった。ホテルにはリニューアルされた本格的なシネマ (700人収容) にお洒落なビストロ、カクテルバー、カジュアルなカフェ&ベーカリーが揃う。当時に負けない華やかさが今に蘇った。一時は近所の高級マンションの住民から音楽がうるさいと苦情が入り、ホテルのパブリックスペースを4ゾーンに分けて各々個別に音量を調節できる新システムを導入してトラブル解消したという。 チャールストンでも踊っているかのようにリズミカルなロゴやグラフィック (デザイン:Maria Dahlgren) から、コラージュ・アートのようなパターンの廊下のカーペット (デザイン:Carouschka Streiffert) まで、リヴァルのインテリアはカラフルでエンターテインメント性に富み、気取らず楽しい。アバが活躍していた1970年代に流行したレトロなデザインではない。歴代のスウェーデン映画の名場面がパネル写真として客室の壁を飾っていたり、ビストロの壁には924人もの映画スターのポートレートがアレンジされていたり、シネマのテーマがインテリアにも扱われる。アバのヒット曲で構成されるミュージカル映画『マンマ・ミーア』が日本でも大ヒット上映されたが、去年の夏にスウェーデンでのプレミアとその祝賀パーティーが開かれたのはもちろんここリヴァルでだった。スペシャルゲストとしてアバの元メンバー4人が久しぶりに集い、ホテルのビストロのバルコニーから主演のメリル・ストリープやピーアス・ブロスナンと並んで笑顔でファンに手を振ったのだった。 デザインホテルやブティックホテルというと、とかく民芸調のアイテムを組み合わせることを避ける例がほとんど。ここではエントランスホールやビストロにペルシャ遊牧民の素朴だけど独創的な敷物が21世紀のデザイナー家具と対話している。自然の草木染めの色の暖かさ、複雑な幾何学模様を織り上げる人間の手の暖かさが空間に伝わる。ベーカリーも併設されているため朝食のクロワッサンも自家製の焼き立てで抜群の美味しさ。これだけ美味しいということはバターの量がかなりだろうけど、これほど美味しいクロワッサンはドイツではなかなか口にできない。つい2つも食べてしまった。 明るい客室 (全99室) はコンテンポラリーでもクラシックな雰囲気を持つインテリアで、ラグジュアリー感よりは快適性を重視してデザインされた。部屋に入るとすぐ左脇のテーブルの上にテディベアがちょこんとお行儀良く座って迎えてくれた。予想外の可愛いぬいぐるみの登場に頬の筋肉が緩んでニコっとなる。バスルームでもガラスの可愛いタオル用フックなど小さなサプライズに出会うことになる。"You are the Dancing Queen, Young and sweet only seventeen…"と、鼻歌を唱いながら気分上々でシャワーを浴びる。と、メタボなお腹のフォルムに『ダンシングクイーン』がヒットしてからもう30年以上も経っていることをひしひしと実感するのだった。

スウェーデン

2009/03/18

ホテル・スチューレプラン( スウェーデン・ストックホルム )

ストックホルムへの旅、前回のデザインホテルの次はちょっと趣を変えてブティックホテルに部屋を移した。ホテルから目と鼻の先に位置し、レストランやナイトスポット、オシャレな店が並び賑わう広場「スチューレプラン」の名前をとって2008年5月にオープンしたばかりの新しいホテルだ。まさにスモール&ラグジュアリー。躍動するメトロポールの吐息を感じながらもホテル・スチューレプランではひっそりと静かな安らぎの時を過ごせるだろう。 1899年に建設された19世紀末の建築。歴史を木肌に感じさせる重厚な扉を開ける。ホテルのロビーもロビー然とせず個人の邸宅のサロンにお呼ばれしたかの気分になってくる。古いエレベーターや階段室のステンドグラスをあしらった窓など美しいディティールも残された。ホテルのインテリアはスウェーデンの職人の手になる家具造り伝統を大切に受け継ぐガルボ・インテリア社が担当。トレンドを追わずタイムレスなエレガンスを追求している。18世紀のグスタヴ三世の時代に生まれたグスタビアンスク(グスタヴ・スタイル)と呼ばれる新古典主義のスタイルにシンプルでコンテンポラリーなテイストが加味された。オリジナルデザインの木の家具は暖かみが違い、長く使えば使うほどもっと深みが出てくるのだろう。壁の塗装には英国のファロー&ボールの塗料を使用。最高級の天然顔料で今も伝統的な製法で作られるこだわりの塗料である。 全102室はそのプロポーションやキャラクターが異なり同じインテリアは二つとなく各々に個性を持つ。部屋の大半はクラシックなインテリアで、カテゴリーはスモール、メディウム、ラージ、Xラージとサイズで分類されている。ストックホルムの街を見下ろせるロフトスタイルの屋根裏部屋はシンプルでコンテンポラリーなデザインに仕上げられた。 今回はこのホテルで最もリーズナブルな“キャビンルーム”(12室)を予約していた。ロビー脇の階段を降りて廊下にも古いトランクが置いてあったり、帆船での航海に出る気分がしないでもない。泊まったのは101号室でデザインはヨットからインスピレーションを得ている。真鍮の望遠鏡のようなライトからもの掛けとして機能する梯子までアイデアに満ちたインテリアで、小さい部屋でもその小ささを意識させない。クッションや可愛いランプシェードに使われているベージュに深紅のストライプが入った粗いリネンはラルフ・ローレンのテキスタイル、船のロープを連想させる。部屋に用意されたコーヒーセットにとても惹かれた。コーヒーの味の方は覚えてないのだが、ペリカン・ルージュ(赤いペリカン)というブランド名もペリカンのマークが付いたカップもドイツでは一度もお目にかかったことがない。それにしてもどうしてコーヒーがペリカンなのか、想像を巡らすと寝付けなくなりそうだ。余計な色もデコレーションも付加せずクリアーに構成されたバスルームで、一際存在感を放つのがアレッシィとフィンランドのメーカーORASとのコラボレーションによる水栓「dOt」だった。オランダの建築家ヴィール・アレッツのデザインで日本の風呂文化に影響を受けているとか。キャビンルームは地下にあるので部屋にもバスルームにも窓がない。子供の頃に戦争で体験した防空壕での日々が原因で地下に降りることができず地下鉄にも乗れないというドイツ人の知り合いがいるのだが、そういう地下恐怖症の方はキャビンルームを避けて地上の窓のある部屋へどうぞ。 “あなたのために”という名のホテルの北イタリア料理レストラン「PerLei」のバーカウンターに朝食ビュッフェが用意される。濃紺やワインレッドのベルベットのふかふかの椅子でアールデコ調のラウンジ空間だ。そして世界初の「ボランジェ・シャンパーニュ・バー」でシャンパーニュのグラスをダニエル・クレイグの渋さで傾けてみたい。ボランジェはジェームズ・ボンドが愛する『007』のシャンパーニュ。バーの2階から1階のくり抜かれた天井を突き抜けてシャンデリアが輝く。次の『007』ではここでボンドがシャンパーニュをオーダーする、なんてシーンを勝手に思い描くのだった。

スウェーデン

2009/02/16

クラリオン・ホテル・サイン( スウェーデン・ストックホルム )

私が住んでいるハノーファーの街のカフェやレストラン、ミュージアムなどでも北欧のモダンな椅子にお目にかかることはあるけれど、やはり北欧の現地で北欧のデザインに触れると同じ椅子でもよりオーセンティックに感じられてくる。去年の2月にオープンしてまだ新しい「クラリオン・ホテル・サイン」は北欧デザインの魅力を満喫できるストックホルム最大(客室数:558室)のデザインホテルだ。

ストックホルム中央駅や空港と市内を結ぶアーランダ・エクスプレスの駅から歩いてすぐと便利なロケーション。中央駅から北へ伸びる線路と、ストックホルム市が新しい公園に再開発中のノッラ・バーントリエット広場の間に建てられた。ベルリンやワシントンのスウェーデン大使館を一任されるなど、スウェーデンを代表する建築家ゲルト・ヴィンゴード(Gert Wingardh)によるスペクタクルで研澄まされた刃のような建物。広場側へはガラスのオープンなファサードだが、線路側は騒音防止も考慮して一つも窓がなく、ファサードは表面加工が異なりキャラクターが違う黒い御影石を組み合わせとても彫刻的だ。表面がラフな明るいトーンの御影石は雨が降ると濡れて黒くなったり、光の具合、四季折々の天候の具合でファサードも微妙に変貌していく。

インテリアのクオリティーも建築のクオリティーに肩を並べる。(デザイン:Lena Arthur)時と共に古くさくなっていくのではなく、年季が入ってより美しくなるホテル空間を目指したという。北欧デザインの歴史を築いた巨匠の家具や、その伝統を受け継ぎながら今現在活躍中のトップデザイナーの家具の数々が全館にあふれる。ロビー、「アクアビット・グリル&ロー・バー」、バンケットホール、コンファレンス施設、そして9Fから11Fまでの客室はアルネ・ヤコブセンへのオマージュという印象で、デンマークのデザインが主役を務める。2Fラウンジではヤコブセンの椅子とデンマークの新世代デザイナー、モーテン・ヴォスの椅子が対話する。どちらも知的なユーモアがあり使う人間のファンタジーをくすぐるデザインだ。

客室は各階毎にテーマの国によってインテリアが異なり、例えば6Fはアルヴァ・アアルトの家具でフィンランド・ルーム、5Fがノルウェー・セイズの家具でノルウェー・ルーム。4Fが今回私が泊まったスウェーデン・ルームで、ブルーノ・マットソンとグニラ・アラードの椅子が待っていた。アラードは昨年国際デザインフェア旭川のコンペ審査員に招聘されたり日本でも評価が高く、彼女のシネマ・シリーズは実に機能と美しさのバランスがパーフェクトな家具だ。部屋には各々の国を象徴する白黒写真も壁を飾る。照明はフロス社(伊)が部屋の家具と調和するようホテルのために特別に光のトーンをクリエートした。バスルームはとても明るくガラスのシンクからマテリアルや色の組み合わせもジェントルな雰囲気で、バスルームへのガラスのドアを90°開ければトイレのドアを閉める結果になるという一石二鳥のアイデアがユニークだった。このホテルで初めてスウェーデンの伝統あるDUXのベッドで眠る機会を得た。ドバイの海上の超贅沢なホテル「ブルジュ・アル・アラブ」にもセレクトされたくらいだから、さすがに寝心地は7ツ星であった。

屋上温水プールも完備しているスパは宿泊料金とは別途だが、スパのロビーから建物突端の屋上テラスへは出ることができた。バスローブでスパークリングワインを飲みながらリラックスしている人達の前を「ちょっとすみません」とダウンコートを着たまま横切って。1960年代のアイコン的なバブルチェアが吊り下がる。フィンランドのエーロ・アールニオがデザインした透明アクリルのシャボン玉のような椅子が揺れる。あの頃の宇宙への憧れが揺れているかに。アポロ11号人類初の月面着陸にフィーバーしたのを懐かしく思い出しながら、目の前に広がるストックホルムの光景をユラユラと揺れながらしばし眺めるのだった。

スウェーデン

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