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外壁には手漉和紙を折って型としたアルミキャストパネルを用いた。
厚さ7ミリの薄さでありながら、和紙の質感やシワの陰影を継承し、通常は欠陥品とされるアルミ素材自体のムラを意匠として表現している。この薄さの中に、まちの持つ肌理や手仕事的クラフトマンシップへの思いを込めた。 -
シワパネルによる柔らかな構えと、間接照明による温かいアプローチがゲストを迎え入れる。近隣には食事処が数多くあるため、ホテル内にダイニングを持たない計画とし、1階には酒肴だけを提供する日本酒バーを設けた。エントランスに置かれた大きなテーブルが夜はバーとなり、日中は宿泊者のラウンジとなる。バーは小さな坪庭を介して、まちに開かれている。
まちとつながり、その土地のもつ肌理を感じられる小さなホテル
築地一丁目の小さなホテル計画。
このまちは現代的なオフィスビルが建ち並ぶ一方、職人と町人の文化が根付き、懐かしくもゆったりとした雰囲気が残っている。
そこで我々は、周辺の風景に合わせ、ホテルとしての記号を排除した抽象的な立面とし、温かで柔らかなファサードをデザインした。
また、小ささを逆手に取り、近隣の人々や資源のネットワークを構築しながら完成するプログラムをデザインし、ホテルの中に閉じた世界観をつくり込むのではなく、場所に根ざし、その場所ならではの滞在体験ができるホテルづくりを目指した。
ひとつひとつの空間は小さくとも、まちと連続し、その土地のもつ肌理を感じてもらうことで、豊かな体験を与えることができるのではないだろうか。
またそれが、小さな都市型ホテルが提供できる最大のホスピタリティではないかと考えている。
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2階は宿泊者専用の貸切風呂とし、畳敷きの床や青森ヒバの浴槽など、触感や嗅覚等の身体感覚を伴って日本文化を体験できるスペースとしている。 -
湯上り処はステンレスメッシュのスクリーンを通じて街路に開かれており、築地のまちの中にいることを感じさせる。特注のラタンソファは配置を変えることで様々な人の集まりが可能。
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客室は計7タイプ。基本的にはワンルームのオープンプランとし、梁型や柱型を感じさせないようにボリュームを整え、簡素ながらも広がりを感じさせるつくりとしている。床仕上げはフローリング張り。カーテンや読書灯などは特注にて製作。
写真は「プレミアダブルベッドルーム」。 -