デザイナーのためのヨーロッパホテルガイド 〜水まわり編〜 Vol.101

ソフィテル・フランクフルト・オペラ(ドイツ・フランクフルト)

2017/12/01

Sofitel Frankfurt Opera

Add:Opernplatz 16 60313 Frankfurt am Main Germany
Tel:(+49)69/2566950
Fax:(+49)69/256695802
E-Mail:H8159@sofitel.com
URL:http://www.sofitel.com/de/hotel-8159-sofitel-frankfurt-opera/index.shtml

緑の公園ボッケンハイマー・アンラーゲに面したメインエントランス。

フランクフルトのオペラ広場近くのホテル建設現場で、地下駐車場のために用地を掘っていたら、地下12mの深さに、誰も予期していなかった良好な状態で保存された2000年前の魚の化石が現れた。それはフランクフルトで発見された最古の化石。ホテル完成までのストーリーに、こんなエピソードは他にないだろう。ドイツの考古学者は大喜び!不動産開発業者はホテル建設作業を一時ストップするしかなく、化石の悪夢に頭を抱えることとなり、フランクフルト最新の5つ星ホテルは、当初の計画より2年も遅れてのスタートを余儀なくされたのだった。
(注:興味のある方は、こちらから化石の現物の写真を御覧になってください。http://www.fr.de/frankfurt/frankfurt-fossilienfund-weltnaturerbe-opernplatz-a-626947

「ソフィテル・フランクフルト・オペラ」は、2016年10月にフランス首相も参席して、オープニングを祝った。ベルリン、ミュンヘン、ハンブルクに次いで、ドイツで4軒目のソフィテルだが、ここフランクフルトでは、究極のロケーションを誇る。ホテルの名前が示唆するように、フランクフルトの中心で、ペガサスを屋根に冠し、雄姿を見せるアルテ・オーパー(旧:オペラ座)と、その広場に面する。空襲で破壊され、戦後はずっと“最も美しい廃墟”と呼ばれていた歌劇場(現:コンサートホール)は、1981年に19世紀末のオリジナルの姿に蘇生し、再び街の象徴的建築となる。その歴史的事業を成し遂げたティルマン・ランゲ・ブラウン & シュロッカーマン建築事務所が、ホテルの設計も担当した。オペラ座の建築美を表敬するかのように、時代を超えたエレガンスのホテル空間が広がる。

インテリアを一任されたのは、パリのスタジオMHNA。5代続くキャビネットメーカーの家に生まれ、自身もデザイナーであると同時に、木のマテリアルを知り尽くした職人でもあるマルク・エルトリシュ(Marc Hertrich)と、ランバンのメゾンで仕事をしていたニコラ・アドネ(Nicolas Adnet)の才腕コンビが率いる、ホスピタリティー分野で国際的に活躍する事務所だ。気張ったデザインでなく、贅沢なディテールに凝ったオートクチュールのスピリットを感じさせる。デザインはフランス独特の建築文化の1つ「オテル・パルティキュリエール」(Hôtel particulier)がインスピレーションの源となり、それが21世紀のフランクフルトにコンテンポラリー & クラシックに新解釈した。オテル・パルティキュリエールは17世紀、18世紀に貴族や富豪が建てた芸術文化の香り高い都市宮殿的な館のことで、パリには今も400軒ほどこの類いの建物が残るという。その典型的エレメントには豪華なシャンデリア、気品ある階段、サロン、メザニン、ギャラリー等が数えられる。ホテルのロビーラウンジは、パリのフォッシュ通りの「エヌリー美術館」のように、異国の美術工芸品をコレクションしてきた由緒ある家に招かれたような気分になる。チェックイン時には、レセプション背景を飾るフランス老舗壁紙工房ズベール社のモノクロームなパノラマ壁画にまず目を奪われてしまうだろう。

ソフィテルはプロジェクト毎に、デザインとその土地の文化の関係を築くよう試みているが、ここでは1749年、フランクフルトに生まれた文豪ゲーテもホテルコンセプトの1つのテーマになっている。ゲーテは20代半ばに、フランクフルトの銀行家シェーネマン家でのハウスコンサートで娘リリーと知り合い、恋に落ち、婚約までするが、両家の反対もあり、2人の愛は実ることがなかった。ホテルのバーは「リリーズ」(Lili’s)、彩り豊かなフレンチ・レストランは「シェーネマン」(Schönemann)と、ゲーテの生涯で最愛の女性だったと言われるリリー・シェーネマンに捧げられている。オランダの著名な写真家エルヴィン・オラフ(Erwin Olaf)による肖像がバーの壁に掛かり、若きゲーテとリリーを現代に蘇らせる。

ロビーとレストランを繋ぐ通路もただの廊下でなく、セラミックアートギャラリー空間のよう。ロビー上階のミーティング & イベントフロアでは、古代ギリシャ彫刻風のスターウォーズのキャラクター像で話題をさらったフランスのアーティスト、トラヴィス・ダーデン(Travis Durden)作の異彩を放つ肖像シリーズ「悪党どもの頭蓋骨」に歓迎されて、一瞬ぎょっとした。

バーカウンターの「カンサス」スツールを始め、ベルベットのミッドセンチュリーモダンなチェア等、ホテルの椅子類の多くは、ポルトガルの最高クオリティーのインテリアブランドBRABBUで特製された。

3Fから6Fに客室(119ルームに31スイートの全150室)が配され、120㎡のプレジデンシャルスイートには、フランクフルトを一望できる130㎡ものプライベートテラスまで付いているとのこと。TVの存在は部屋の美感をどうしても妨げてしまうが、ここではその問題の1つの解決方法が開発された。TVを見たいときだけ、開けばいい、ゲーテのファウストをモチーフにしたアートが、まるで壁にグラフィックを飾ってあるかのように、モニターを目隠しするというアイデアだ。洗面 & シャワールームと部屋の廊下やベッドルームとのパーテーションに配された2つの引き戸、両方を全開したり、片方だけ閉じたり、両方閉じたり、その開き具合や閉じ具合も様々で、ユーザーが好きな開閉状態にできて楽しい。

そしてサン=テグジュペリの『星の王子さま』が、ベッド脇のナイトテーブルに置かれているのに思わず「オー!」と声を上げて感激してしまった。「本質的なことは目ではみえない、心で見ないとね」何十年振りかでそんな素敵な言葉の数々を再読し、穏やかな気持ちで眠りにつくことができたのだった。

エントランスホール。

入って左手にレセプション。

右手にコンシェルジュ。

チェックインするより先に上ってみたくなる、エレガントなデザインの階段。

エントランスホールとロビーラウンジの間をマークするアートワーク。

ロビーからエントランスホールを見返す。

楕円の吹き抜けのロビー空間。文化の香り高いサロン感覚のインテリア。

ロビー左、客室階へのエレベーター周り。

ロビーをギャラリーから見下ろす。

公園に面してオシャレなビジネスコーナーも。

ロビーラウンジに続くホテルのバー「Lili’s」。

吹き抜けのロビーを囲む2Fの多目的ユースの空間。

各種ショーケース内の展示物にも凝っている。

ミーティングルームのデザインもウィットに富んでいる。廊下の壁を飾るアートもユニーク。

Soスパ & Soフィット・ウェルネス。プールが25mで、実に泳ぎがいがある。シャープな照明、通りから採光する丸窓が印象的。

フランス料理のレストラン「シェーネマン」(Schönemann)。レストランへのエントランスは、旧オペラ座に面した広場側。夏は広場にテラス席も出る。

ホテルのロビーとレストランを結ぶ通路も美術工芸ギャラリーのよう。

ブラック & ホワイトでハイセンスな婦人用化粧室。タオルの置き方に注目。

アンティークな鏡を効果的に配した客室階の廊下。

スーペリアルーム。

部屋のフロア、バスルーム側の鏡面の引き戸にホワイトラッカーの収納家具が映る。

壁のTVを隠すためのアーティスティックなアイデア。ゲーテの『ファウスト』のワンシーン。TVを見たい時はこう開く。

枕元には『星の王子様』の本も。

トリミングなど、バスローブのデザインが他のホテルと違う。

スリッパを入れる袋。

ゲストが2つの引き戸を使って、自分の好きなように様々な状態にバスルームとベッドルームを開閉できる。閉じた状態。

開いた状態。