デザイナーのためのヨーロッパホテルガイド 〜水まわり編〜 Vol.103

サントン・グランドホテル・ レイロフ(ベルギー・ゲント)

2018/02/01

Sandton Grand Hotel Reylof

Add:Hoogstraat 36 9000 Gent
Tel:+32-92354070
Fax:+32-92354079
E-Mail:gent@sandton.eu
URL:https://www.sandton.eu/sandton-grand-hotel-reylof/en/

ホーグ通りに面した18世紀のバロック様式のファサード。

冬のゲントの旧市街、霧が立ちこめるその夜景は、ベルギー象徴主義の絵画そのままで、まさに幻想の世界だ。レイエ川両岸には中世の栄華を偲ばせるギルドハウスが建ち並び、その雄姿を凍てついた水面に映し出す。また、18世紀の優雅な邸宅がベルギーでも屈指のデザインミュージアムだったり、19世紀のギスラン精神病院で現代美術展が開催されたりと、ゲントには歴史と現在が融合して独特の空気が漂う。

「サントン・グランドホテル・ レイロフ」(2011年オープン)もゲントならではのホスピタリティー空間で、白亜の砂岩を用いた18世紀のバロック建築に、今日のアートとデザインが融合する。中世の時代の市壁の外に位置するが、中心街までは歩いてほんの数分で、観光にもとても便利だ。ホテルになったルイ14世スタイルの館は1724年、裕福な商家の子息で詩人オリヴィエ・ド・レイロフ伯 (1684-1742)が建てた私邸だった。この館と付属の馬車庫は、歴史的建造物保護法の対象になっている。

オランダのサントン・ホテルブランドが着眼した時、この建物は落ちぶれてしまっていたが、そこに再び美しく生まれ変わらせる可能性を予測し、隣接する19世紀の館も獲得した上で、ホテル開発事業をスタートさせる。この隣接する館はとても意味がある家で、ゲントが誇る作家モーリス・メーテルリンクの生家ということだ。メーテルリンクに捧げて「青い鳥」(Blue Bird)と名付けられたプライベートユースのバーもある。インテリアはサントンホテル創業者(Gui de Vries)が総合監督役を務めた(オランダのインテリア事務所Willemien Van Aartsenとコラボレーション)。デザイナーズギルドやクリスティアン・ラクロワ・ブランドのテキスタイルや壁紙の選択、照明(Vaughan社、Delta Light社)の使い方に最大限のこだわりが感じられる。

見事に修復されたレイロフ伯邸の装飾豊かなホールやサロンがホテルのレセプション、ロビー、各種イベントルームに利用される。工芸美術館のようなリビングのアンピール様式の暖炉や、エントランスホールの螺旋階段、そのトロンプルイユのドーム天井画は、ため息がでるほど美しい。各々の間はゲント所縁の風景画家ヴァレリウス・デ・サーデレール(Valerius de Saedeleer)や、印象派画家エミール・クラウス(Emile Claus)等の名を借りている。ホテルのメインエントランスは18世紀の馬車口で、チェックインするのもレイロフ伯との文学談義か食事に招待され、レイロフ伯が待つサロンに案内される気分になる。しかしノスタルジックなだけでなく、エントランスから迫力のコンテンポラリーアートにも迎えられる。

中庭を抜けて昔は馬車が置いてあった建物には、小さなインドアプールやハマムもあるモダンなウェルネス&スパセンター(Zen Senses)が設けられている。夜には中庭に設置された巨大なカタツムリのライトオブジェクトが黄色に光り、なんともユーモラスである。

19世紀の館の通りに面した1Fの大空間を、色鮮やかでスタイリッシュなシャンパーニュ・バー&カフェラウンジと、グルメレストラン「ロフ」(Lof)が占める。レストラン名はレイロフのロフだが、同時にオランダ語での賞賛という意味も込めてあるようだ。バーのカウンターは11,000個のLEDライトで、夜は石のブロックが神秘的に光る。

通りからは見えないが、中庭に面した奥に新館もあり、ホテルの客室は全158室。せっかく選ぶなら、旧館の部屋の方がインテリアに深みがある。泊まったのはデラックスルームのカテゴリーで、部屋のドアを開けると紅白のストライプの壁紙に意表をつかれた。ダークブラウンの古い木組み構造との強いコントラストがとてもリズミカルだ。天井も高く、ベッドルームがリビングよりも数段高い舞台のようになっているのもユニークだった。バスルームで特にお気に入りだったのがトイレの壁。新しいブティックホテルで、トイレをまるで春の香りが漂ってくるような淡いピンクの花模様の壁紙で仕上げてある例は、皆無なのではないだろうか。ついトイレにお座りする時間が長くなってしまったのも仕方ない。

さて、ホテルは今年の夏に更にリニューアルされ、秋にオランダのラグジュアリー・ブティックホテルブランド「Pillows」のグランドホテルとして再オープンするとのニュースが出た。一体どんなふうにデザインが変わるのか(或は変わらないのか)、秋にまた行ってみたくなりそうだ。

メインエントランス。18世紀には馬車も出入りできた。

昔は通りと馬車庫を結んだ通路から、更にエントランスホールへの扉を開ける。通路もアートギャラリーの雰囲気。

オランダのアーティスト、リック・トリエスト(Rick Triest)の抽象絵画に歓迎される。

エントランスホール。

階段の上り下りに思わず撫でてしまう見事なフルーツの彫刻。

エントランスホール右手にはレイロフ伯の住まいを改修して、リニューアルしたラウンジやサロン。左手にレセプション。

上階には各種ミーティングルームとロビー。

プライベートバー「青い鳥」。

シャンパーニュ&カクテルバー。

グルメレストラン「ロフ」。

19世紀の館の1Fには、色々自由に使えるラウンジコーナーがある。

中庭。

中庭に面する新館。

馬車庫を改造したウェルネス&スパのインドアプール。

光るカタツムリのアート。

一般客用化粧室。洗面台は客室と同タイプだが水栓は別タイプ。

館内をいろいろ歩いてみると廊下や階段室もギャラリーのようで楽しい。

天井がとても高い最上階のデラックスルームのリビングルーム。壁のストライプやベルベットの赤い椅子が、歴史を語るオリジナル建築の木と美しく対話。

ステージに上がるように階段を数段上ってベッドルームへ。

ベッドサイドライトはレザー張り。

ベッドから木組みの構造がよく観察できる。

すっきりとまとまり、使い勝手の良いバスルーム。扉のないオープンな洗面台下の棚はとても実用的。アメニティはイタリアのブランド「Prija」。ステンレスのキューブから、雲かお花のようなティッシュペーパー。

洗面台の右手にトイレへの白いドア。大理石の床に花模様の壁というユニークなコンビネーション。

ホテルからは観光名所も歩いてすぐ。冬でも格別のゲントの夜景や、個性的なデザインミュージアムを楽しめる。