デザイナーのためのヨーロッパホテルガイド 〜水まわり編〜 Vol.106

レ・コント・ド・メアン(ベルギー・リエージュ)

2018/08/01

Les Comtes de Méan

Add:9-11 Mont Saint-Martin, 4000 Liège, Belgique
Tel:+32(0)42229494
Fax:+32(0)42229493
E-Mail:info@lescomtesdemean.be
URL:https://www.lescomtesdemean.be/

モン・サン・マルタン通りに面したメインエントランス。コの字型のメアン伯爵の館に入る。

「レ・コント・ド・メアン」は5年にもわたる歴史的建物のリノベーションを経て、リエージュ初の5ツ星ホテルとして今から7年前にオープンした。モン・サン・マルタン通り9番地にあるセリ・ロンシャン館と、同じ通りの11番地にあるコント・ド・メアン館、この2つの間にある貴族の館の3館が、7階建ての新築客室棟を要に繋がり、ワロン地方でもユニークな形のホテルコンプレックスにトランスフォームされたのだった。20世紀初頭にセリ・ロンシャン男爵の所有となった館は、元々16世紀にリエージュ司教領を支配したド・ラ・マルク家の邸宅だったもの。メインエントランスがあるコの字型のメアン伯爵の館は、南ファサードの外壁など、15世紀までその建築史は遡るという。丘の斜面に建ち、30mもの高低差があるのもこの施設の特徴だ。以前はクラウンプラザ系ホテルだったが、チェーンのイメージと、ホテルの実際のラグジュアリーでエレガントなイメージが噛み合わないことを自覚し、今はチェーンから離れている。

インテリアはデザイナー&プロジェクトマネージャーのエリック・ゴフィンと、ベルギーの高級ホテルのインテリアで定評のあるドミニク・ミンゲットとのコラボレーションで実現させた。「光とサプライズに満ち、モダンと歴史を融合するインテリア」を目標にデザインされた。リエージュの街の歴史と、自然環境から形成されてきたアイデンティティを表現しながらも、明解にグローバルでもあるインテリア。コンテンポラリーな雰囲気に満ちていて、なおかつ特別な建築遺産としての古典的性格を維持する。そういう対立のデザインチャレンジに挑んだのだった。「真に美しくモダンなホテルを創り上げるために、歴史的要素と新しいデザインが様々な意味でどれだけバランスを保てるか、また許されるコストの範囲で自分のアイデアとコンセプトを妥協せず、確かに達成できるデザインを見出せるかということ、そしてリエージュ市民も“このホテルは私達のホテル”と自負できるよう、ゲストと住民の両方にアピールするデザインであることも重要なポイントでした。」とデザイナーは言う。

マテリアルの選択にも細心の注意を払い、環境に責任を持つ主義のメーカーの製品が使われ、例えば“人にやさしく地球環境にもやさしい製品”をつくり続けて80年の歴史を持つ、オランダのデッソ社(DESSO)のカーペットが部屋で足元を暖かくしてくれる。ストライプのカーペットは「シンフォニー」という音楽的な名前がついている。ヴァル・サン・ランベール社に代表されるように、ベネチアから彩色技法を、ボヘミアやイギリスからカット技法を導入し、リエージュの地方には17世紀から築かれてきた独自のクリスタルガラス工芸の伝統がある。そこで照明には地元のクリスタルも使われた。

エントランスホールを抜けると左手がバーで、14mのカウンターを照らすアールヌーヴォー調の唐草文様が入った清楚なホワイトのコリアン製大シェードが印象的だ。右手に黒のシェルフと牡丹色のチェアのコントラストが強烈なライブラリー。ここからも、客室へのエレベーター前からも、旧市街を見下ろす眺望が素晴らしい。レストラン「ラトリエ」(90席)はカジュアルなビストロスタイルで、天気が良ければ眺めのいいテラス席で朝食も可能だ。オーガニックなラインのベルベット素材で牡丹色の大胆なファニチャーが目を惹く。3色のネットのカーテンが日光をフィルターしてくれる。そしてピエール=ミシェル・ド・ロヴァンフォス(1745ー1821)作のフレスコ画や、壁の繊細なスタッコ装飾が見事なお城の広間のような淡いグリーンのシノワズリのスペースは、レセプションやパーティーに好んで利用される。

地下のバー「ラ・カーヴ」(16席)は、古い兵器庫内にある。ヴォールト天井のオリジナル空間構造を活かし、照明も効果的に配された。スパのプールからは、10世紀にも遡る城塞の壁が窓の外に見える。ゴージャスで各々に個性的なスイートが9室ある館は、階段室の見事な装飾に驚くばかりで、ナポレオン3世様式の装飾を完璧に修復し、再現した職人技術に拍手喝采を送りたい。スイートを予約していなくても、日中のほとんど誰もいない時間ならゆっくりと見学できる。客室(全125室)では壁に掛かる写真が何か特別なパワーを放っていて、一体これは誰が撮影?と思ったら、フランスの著名な報道写真家、国際的にも航空写真の第一人者というヤン・アルテュス・ベルトランの作品であった。ホテルで氏の写真にお目にかかったのは、ここが初めてである。

ホテルから石段を下りていけば、修改築を終え、煌びやかに蘇ったワロン王立歌劇場にも歩いていけるので、夜の観劇にも便利なロケーションだ。某エンブレムのことで揉めたのはこの劇場だったか?と一瞬ギクッとしたが、全然違うロゴマークだったので、安心してオペラを楽しむことができた。

ホテルとリエージュの中心街を結ぶ風情ある石段。左手がモダンな新館の客室棟。

エントランスホールに入って右手にレセプション。

左手にオレンジ系でまとめた明るく爽やかなロビーラウンジ。ベルベットの長いソファーに、凝った柄のクッションを多数アレンジして雰囲気を出す。フラワーアレンジメントも素敵。

ビジネスコーナー。

ロビーから客室へのエレベーターに向かう中央通路の右手にライブラリー。

左手にバー。

レストラン「ラトリエ」の通路側のパーテーションのデザインが面白い。つい覗き見したくなる好奇心刺激のデザイン。

覗き見した様子。

パーテーション内側はテーブル席。

窓側席からセリ・ロンシャン館が見える。

エレベーター前のガラスウォールからの眺望。

地下の古い兵器庫内のバー「ラ・カーヴ」。

一般客用の化粧室は、ワイン貯蔵庫を思わせる洞窟のような地下に。とてもハイセンスな手洗いのデザイン。

美しく修復、リノベーションされた歴史的空間の数々が控える棟への通路。蘭の花でゲストを歓迎。

アペリティフなど楽しめるラウンジ。

モダンなホテルでなく、バロックの古城に迷い込んだかのようなシノワズリの多目的広間。

スイートの館。階段室は職人技術の粋を集めたオリジナル装飾修復作業の結果。

新館客室棟の廊下。デコラティブなアートが壁を賑やかに。

スタンダードのダブルルーム。ベッドヘッド側の壁に浮き上がるような花のパターンが可愛い。フランスの写真家ヤン・アルテュス・ベルトランの写真がアイキャッチャー。窓から何百年も前の石壁が見え、郷土博物館にいるみたいでもあった。

バスルームには曇りガラスのドア。洗面台の大きな鏡の下のラインだけ、バロック時代の鏡の額のようにシルバーの装飾的な縁なのがユニーク。シャワーとバスタブが別々で嬉しい。

メタリックなタイルで水の流れのようなアクセントをバスタブ側の壁に加えたり、シャワーブースやトイレには異種の2種類のタイルを使ったり、さり気なくも凝ったデザイン。