デザイナーのためのヨーロッパホテルガイド 〜水まわり編〜 Vol.61

ホテル・パリ・ルーブル・オペラ(フランス・パリ)

2008.11.20

Hotel Paris Louvre Opera

Add: 4 rue des Moulins, 75001 Paris
Tel: +33(0) 1 40 20 01 10
Fax: +33(0) 1 40 20 01 30
E-mail:
hotelparislouvreopera
@hotmail.com

URL:
www.hotelparislouvreopera.com

オペラ地区、ムーラン通りの17世紀の建物がブティックホテルに変貌した。


通りから覗き見するだけで既に個性的な隠れ家ホテルの雰囲気が漂う。




画家トゥールーズ・ロートレックに縁あるロケーションから、ホテルのサロンにも『黒いボアの女』(1892年)の複製が掛かる。

芸術の都パリに縁ある芸術家は数知れない。19世紀末から第一次世界大戦で貴族社会が崩壊するまで、パリがかつてない華やぎを求めたベル・エポック(美しき時代)を駆け抜けた短命の画家、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック (1864 〜1901) もその一人だ。ホテル・パリ・ルーヴル・オペラのあるムーラン通りにはロートレックが一時住み込んで制作していた娼館があった。運命に遊ばれた娼婦達の素顔を描いた名作が生まれた。ホテルになった17世紀のバロック時代の建物はオペラとルーヴル美術館の中間に位置し18ヶ月もの時間を費やして再建、改装された。パリのど真ん中にいて隠れ家的なのも魅力だ。この小さなブティックホテル(2005年にオープン)の小さな部屋の窓を開け古い鉄の装飾的な手摺に触ると、ロートレックの生きたベル・エポックの空気が感じられた。甘酸っぱくデカダンの香りがする空気だ。

ホテルのオーナーのオリヴィエさん自身がデザインしたというだけあってインテリアの隅々にも建物への愛情が注がれている。プライベートなサロンの雰囲気のラウンジでは今年日本で初展示されたロートレックの「黒いボアの女」 (1892年) の複製がゲストを迎える。レセプション、ロビー、ブレックファースト・コーナー、階段室といったパブリックスペースは木の葉をモチーフにしたメタルワークのファニチャーが職人の手のぬくもりまで想像させインテリアに深みを出している。鏡のデザイン一つにも隣国なのにドイツではありえないフランスのエレガンスが形になっている。すみれ色とモスグリーンというカラーコンビネーションも独特だ。

部屋はシックにブラウン、べージュ、ワインレッドにトータルカラーコーディネートされ、私が泊まった頃は、ベッドは毛布にベッドカバーのスタイルだったが、今はフカフカの掛け布団にリニューアルされているとのこと。足を自由に動かせるように寝る前に毛布をマットレスからえいっと解放する必要がなくなったわけだ。白い布団カバーは小さい部屋を明るく広く感じさせる効果もあるに違いない。ホテルは全20室だがそのうちの17室がバスタブ付きのバスルームなのもパリの街を歩き過ぎて疲れた足を癒すのに嬉しい。ナチュラルなベージュ色にまとめられ、限られたスペースを最大限に活かして構成された。

バスチーユ/マレ地区ならパリの私のお気に入りホテルはプチホテル「カロン・ド・ボーマルシェ」である。モーツァルトの「フィガロの結婚」の原作者で18世紀の著名な劇作家ボーマルシェに捧げたインテリアで18世紀と現代が繋がる。初めて泊まったのはもう10年以上前のことだが、偶然通りを散歩していて出会ったホテル。可愛いアンティーク家具のお店だと思ってショーウィンドーを覗くとなんとホテルのロビーだった。メトロポールのパリだけれど、パリの街を闊歩するには有名な豪華ホテルよりもパリ・ルーヴル・オペラやカロン・ド・ボーマルシェのようにさりげなく個性あるプチホテルの方がずっと似合っているように思えるのだった。


1階の朝食コーナー。濃淡緑のベルベットのクッションとファニチャーのメタルの素材感が調和。
朝食後はテーブルクロスが消え可愛い紫のお花をアレンジしたカフェコーナーに。
様々なディティールにもオーナーでインテリアデザイナーのオリヴィエさんのセンスが光る。ホテルに入ってレセプション左前の壁。鏡とコンソールのデザインにアンティークとモダンが融合。
棚上の季節のフラワーアレンジメントも凝っている。

1階奥の壁にはエントランス脇とはまたデザインの違う鏡とフラワーアレンジメント。
ガラス屋根からパブリックエリアに自然光が入る
階段室へのドア脇のガラス面もメタルの装飾で加味。

廊下のウォールランプのメタル製シェードや、部屋の案内サインも独特。
エレガントに曲線を描く古い木の階段。