デザイナーのためのヨーロッパホテルガイド 〜水まわり編〜 Vol.76

ルレ・ブルゴンディッシュ・クライス (ベルギー・ブルージュ)

2011.01.05

Relais Bourgondisch Cruyce

Add: Relais Bourgondisch Cruyce Wollestraat 41-47, 8000 Brugge, Belgium
Tel: ++32 (0)50 33 79 26
Fax: ++32 (0)50 34 19 68
E-mail: info@relaisbourgondischcru
yce.be

URL: http://www.relaisbourgondisch
cruyce.be

絵葉書そのままのロマンチックな風景の中に溶け込むブティックホテル「ルレ・ブルゴンディッシュ・クライス」。

  映画の舞台となったヨーロッパのホテルは数知れないけれど、ベルギーの古都ブルージュの「ルレ・ブルゴンディッシュ・クライス」ほどロマンチックなロケーションを誇れるホテルはそうないだろう。世界的な劇作家マーティン・マクドナーのジャンルにはまらない、すっ飛んだ映画『イン・ブルージュ(邦題:ヒットマンズ・レクイエム)』は、そのタイトルのままにブルージュが主役の一人と言っていいほどに、ミステリアスな中世の水都の魅力にあふれる。映画の方はロマンチックなラブストーリーとかでは全然ない。性格も人生経験も全く違うアイルランド人殺し屋コンビ、御法度の殺し屋なのにどこか憎みきれないレイ(コリン・ファレル)とケン(ブレンダン・グリーソン)がボス(レイフ・ファインズ)からの待機命令でクリスマス前のブルージュに着いて、この地でどんな壮絶な運命が自分達を待つのか予想もせず宿に向かうところから映画は始まる。

  この絵葉書そのままのロマンチックな運河風景の中にある宿が16室のみの小さなブティックホテル「ルレ・ブルゴンディッシュ・クライス」だ。メルヘンに出てきそうな木組み切妻屋根の17世紀の建物が、ちょうど運河が合流する地点に双子の様に仲良く並ぶ姿に見とれていると、ホテルの部屋の窓から運河に飛び降りたコリン・ファレルをレイフ・ファインズが欄干から狙い撃ちするというスリリングなシーンも思い出された。
ホテルの名前にあるブルゴンディッシュ・クライスとは一体何のことなのか聞いてみると、2本の枝をX字型に交差させた十字架「ブルゴーニュ十字」を意味するとのこと。エントランスに掛かる飾り看板やレセプションカウンター中央の紋章にもこの十字があしらわれている。その昔にブルゴーニュ公フィリップ善良公が金羊毛騎士団を設立し、十二使徒の一人聖アンデレをその守護聖人に定めたことから、X字型の聖アンデレ十字のモチーフが騎士団と公国の旗に使われたことにブルゴーニュ十字は由来する。ブルージュでは中世の話がほんの前世紀の話のように聞こえるから不思議だ。

  パブリックスペースで見学できだけでもホテルのオーナーの美術品、骨董品のコレクションがかなりのもの。コレクターズアイテムのルイヴィトンの古いトランクを配したり、アンティークのゴールドの鏡やデペロの絵を背景にエレガントなサロンでグラス片手に寛げる。人形の家に入っていくかに狭い客室への階段室は薄明かりで、中世へと歴史を遡る時間の階段を上る気分にもなってくる。

  泊まった部屋の幅が狭くても切妻の屋根裏を吹き抜けにして天井が高く、ドラマチックな間接照明の効果もあり、その狭さを感じさせない。カーテンやベッド、クッションはお揃いの薔薇の花模様で、ファブリックはラルフ・ローレンである。クローゼットがまた宿の何百年という歴史を実感させる扉で、『イン・ブルージュ』にも登場するヒエロニムス・ボスの絵の怪奇動物が現れたりしそうで、恐る恐る扉を開けると中は空っぽで安心した。ドイツでは見たことがなかったのだが、窓が開き過ぎないよう調節する革のベルトのような面白いものを初めて目にした。スタンダードの部屋のバスルームは大理石模様のタイル張りだったが、スーペリアの部屋はバスルームもちょっとゴージャスになってルージュロワイヤルの大理石張りということである。

  部屋は数が少ないウォーターフロントの部屋に固執せず比較的リーズナブルなスタンダードの部屋でも、朝食を頂くティールームの窓際の席から最高の眺めを堪能できるから、満足度はそれで十分だ。ここもロビーやサロン同様にカレル・アッペルの絵画を始め、モダンアートと磨き上げられたアンティークの銀器や掛け時計の骨董品がインテリアに組み込まれ、白鳥のように白い蘭の花がシャンデリアのクリスタルの光に淡く照らされる。奥の紫色の暖炉の部屋はブルージュの伝統工芸であるゴブラン織りの見事なタペストリーが壁に掛かり、中世の世界へと誘われる。朝食のテーブルで「ワッフルはいかがですか?」と坊主頭のベテランウエイターに聞かれる。既にオムレツも平らげてしまっていたので理性は一瞬躊躇したが、本能的に口からはもう「イエス」の答えが出ていた。運ばれてきた焼き立てホカホカのワッフル、そのはんぱでない大きさに私は思わず「ワオッ」と驚嘆の声をあげてしまった。自分でもおかしくなったのだが、ウエイターもヘニングさんも笑い出してしまい、アンコールということで今度はトリオで声を合わせ「ワオッ」とワッフルを愛でることに。口に入れるとサクッシュワッとそれは美味しい。ブルージュはチョコレートもビールも抵抗できない美味しさで、バスルームに体重計が置いてないのが本当に幸いだった。


運河の対岸から見たホテル。切妻屋根に独特の木のファサード、メルヘンに出てきそうな17世紀の建物。

運河に面したホテルへはマルクト広場から南へ伸びるウォレ通りから入る。

ホテルのメインエントランス。運河の見えるテラス席で午後のひととき、ブルージュでも最高に美味しいと言われるワッフルの焼きたてを味わうのもいい。


ホテル前を流れる運河に一羽の白鳥が。水面に映る中世の建物と白鳥の姿、ブルージュならではの美しい場面。

ホテルのウォーターフロントテラスからの眺め。ここで運河が合流しているのがわかる。

レセプション




アンティークのルイヴィトンのトランクを配したり、エントランスのある小広場側の窓辺の演出にも細心の気配り。
1階のサロンはアンティークの調度品と、デペロを始め美術館に展示されていても不思議ではないモダンアートのコレクションが壁を飾る。
クッキーやドライフルーツの入ったガラスのボンボン入れが可愛く並ぶ。背景にはカレル・アッペルのダイナミックな抽象絵画。
白い蘭の花とアンティークのシルバーがシャンデリアの光に淡く輝く。このテーブルが朝食ビュッフェのコーナーになる。
モダンアートと骨董品がインテリアに調和し、時を越えてエレガントなティールーム。
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