デザイナーのためのヨーロッパホテルガイド 〜水まわり編〜 Vol.91

ホテル・トパーズ(オーストリア・ウィーン)

2015/11/02

Hotel Topazz

Add:Lichtensteg 3 1010 Vienna, Austria
Tel:+43 1 532 22 40
Fax:+43 1 532 22 40 499
URL:http://www.hoteltopazz.com
E-Mail:concierge@hoteltopazz.com

未来的なファサード。

11月に入って寒さが増し、日照時間もぐっと短くなると、クリスマスマーケットの始まりが待ち遠しくなる。ドイツ各地でも伝統的なクリスマスマーケットが開催されるが、ウィーンの美しい街を舞台とするクリスマスマーケットは格別の魅力があり、この数年続けてクリスマス前のウィーンに週末旅行に出かけている。そこで今回は、中心街の様々なクリスマスマーケットに、簡単に歩いて行けるロケーションのブティックホテルやデザインホテルを取り上げてみよう。

ますはブティックホテル「トパーズ」から。シュテファン寺院前広場のクリスマスマーケットからローテントゥルム通りを左に下り、リヒテンシュティーク通りを曲がってホテルまで400m。最も長い伝統を誇るアルトヴィーナー・クリスマスマーケット会場のフライウング広場へも近い。ウィーンのホテルの中では、きっと最もユニークなファサードで、誰もがその建築デザインに目が釘付けになるだろう。クラーマーガッセ小路との丸みを帯びた角のデザインも、周辺環境からぐっと浮かび上がる。黒く輝くガラスモザイクのファサードには、まるで建物の眼のような楕円形の窓がリズミカルに開けられた。楕円窓がただの出窓ではなく、一種のシェーズロングで、ホテルのゲストがリラックスして自分の部屋の楕円窓に脚を伸ばし、何か読んだり、iPodで音楽を聴いたりしながら、ウィーンの街角を眺めることができる、ゲストとウィーンの街が対話するスペースなのである。1階は通りに向けて総ガラス張りで、アーバン性を強調する。

トパーズはレニクスグループ社のプロジェクトで、2012年の春にオープンし、同年のヨーロッパホスピタリティー賞のインテリアデザイン部門賞を獲得している。すぐ向かいの「ラメー」と姉妹ホテルだ。19世紀の歴史的ファサードの石造物が立ち並ぶ中で、SF映画から抜け出たかの異物的存在だ。デザイン的にも洗練されているだけでなく、建物自体が低エネルギーハウス (Aタイプ)で、昨今のエコロジー時代に相応しく、排気熱回収などサステイナブルに設計されているのもウィーンでは特筆に価する。地下水利用のヒートポンプシステムが冷暖房をまかなう。

建築はBWMアークテクテン(BWM Architekten)の設計で、たった153㎡の敷地から、計2200㎡もの床面積ができた。工期は16ヶ月、工費は1100万ユーロ。スーペリア9室、デラックス8室、プレスティージュ14室、計32室の部屋が配される。地下にはエレガントなラウンジルームが設けられた。最初はベルベットのすみれ色のチェアにちょっと尻込みしたが、1930年代のサロンのようなアールデコの雰囲気の中で、朝食がサービスされる。夜10時半までワインやコーヒー・お茶を自由に楽しめ、夕方にはスナック類もテーブルに並ぶ趣向になっている。この地下から地上の通りを見上げられる空間構成も面白い。屋上はイベント時にレンタルでき、シュテファン寺院も眺められるテラス付きペントハウスも用意されている。

インテリアはミヒャエル・マンツェンライター・アーキテクチャー(Michael Manzenreiter Architecture)が手掛けた。デザインには20世紀ウィーンのモダン美と、21世紀のコンフォートが融合する。部屋の壁の装飾模様から水鳥の脚の照明器具、バスルームのマテリアルの使い方、他の色々なディテールにもウィーン工房の美学を今に解釈し直したデザインが顔を見せる。コロマン・モーザーやダゴベルト・ペッシェへのオマージュでもある。デザインにまさにウィーンを感じることができるホテルなのだ。

1階は通りに向けガラス張り。まつぼっくりのようなランプがアイキャッチャー。

エントランスホール。

ロビーから吹き抜けを通して地下階のラウンジを垣間見られる。

自宅のサロンのように自由に利用できる地下のラウンジ。コラムにはクリスマスのデコレーション。

セルフサービスのワインやスナック、デザート。

壁の波型の立体的デザイン。

地下ラウンジから地上の通りを見上げる。

大理石の階段室。

客室階のフロア。

73号室。ドアの内側は白いレザー張り。

楕円窓が2つある建物のコーナーに位置する部屋。中央のベッドの桜材製ヘッドの裏側がバスルーム。

テーブルランプやベッドサイドのランプがウィット溢れるデザイン。

ディテールにもこだわったインテリア。トランクやシャンパンを運ぶホテルのボーイのイラストが、水差しやスリッパ等にかわいく登場。

最大のアトラクションはこのリラックスできる出窓構造。

実際に寝転がるとこんな具合になる。

夜は通りの向かいのホテル「ラメー」にカラフルなイメージがプロジェクションされた。

大理石の広々とラグジュアリーなバスルーム。出窓のあるファサード側にはガラスドア。シャワーやバスタブの水栓のグリップがノスタルジック。

部屋の入り口方向のバスルームのドア。

トイレットペーパーのシールやタオルにもホテルボーイのパターンが楽しい。

市庁舎前のクリスマスマーケット。