デザイナーのためのヨーロッパホテルガイド 〜水まわり編〜 Vol.94

ホテル・アンノ1216 (ドイツ・リューベック)

2016/09/01

Hotel Anno 1216

Add:Alfstrasse 38 23552 Lübeck
Tel:0451 400821-0
Fax:0451 400821-10
E-Mail:info@hotelanno1216.de URL:http://www.hotelanno1216.de

ハンザ同盟都市リューベックに残る家で最も歴史ある建物の一つ、トラヴェ川に面したペディメントの造りからも、建物自体がリューベックの貴重な文化遺産とわかる。緑の扉の上の砂岩のルネサンス時代の装飾は、リューベックでも唯一のもの。

ハンザ同盟の盟主として栄えたバルト海沿岸の交易都市リューベック。旧市街は世界遺産に登録され「ハンザの女王」と呼ばれるに相応しい美しい街並だ。トーマス・マンの故郷でもあり、文学の香りも漂う北ドイツの古都リューベックだが、この小さなブティックホテル「アンノ1216」ができるまでは、せっかくの街の美しさに見合う宿はなかった。リューベックを訪れるなら是非とも街の歴史の中に眠る感覚の、このホテルの扉をそっと開けてみたい。「アンノ1216」は、アンノがラテン語の「年」で「1216年」という意味。地下の天井の梁等を年輪年代測定法で検査した結果、建物は1216年に建設開始されたと判明したのだった。その名前の通り、800年もの歴史が宿るホテルなのだ。旧市街でも最も古い通りの一つに数えられるアルフ通りと、アン・デア・ウンタートラーヴェ通りの角、昔の遠隔地商業港に隣接し、ギルド(組合)の会館でもあった。

現在のオーナーはケルン出身のジーモン家で、眼科医の父と自然写真家の母が、リューベックに住む娘のために購入したもの。父親がホテルをやろうと言い出した時は、誰も本気とは思っていなかった。2011年、ホテルに内改造&改装され、ホテル業とは全く無縁だった娘のダグマーさんが転身し経営管理している。インテリアにも彼女のセンスが発揮された。ルネサンス、バロック、ロココから19世紀の泡沫会社乱立時代に至る様々な過去の様式と、コンテンポラリーなデザインが拮抗することなく穏やかに対話する。オウィディウスの変身物語のモチーフを描いたバロック時代の24枚の絵のパネルが、ぐるりと部屋の壁を飾り、今回紹介するスイート (Nr.3)以外にも、スイート(Nr.4)やスタッコ大理石のロココスイート (Nr.2)などもある。これらスイートに泊まるためだけでも、リューベックまで足を伸ばす価値があるかもしれない。

アルフ通り38にある、かつての商館の玄関ホールがロビーに。

レセプションデスク。

中庭。

トラヴェ川を臨む朝食ルーム。朝食メニューにはオーガニックなプロダクトが揃う。

リューベック市内でも無二の歴史的階段。

スイートNr.4へのドア。

階段手摺の緑に、植物の緑の写真アートが調和。

ホテルはスイート3室、ダブル6室、シングル2室。これは60m² のスイート (Nr.3)。美術館の一室に眠るようだ。ホテルへの改造工事で再発見された天井フレスコ画。太陽神ヘリウス、曙の女神アウロラ、月の女神セレネなどが描かれる。約20%オリジナル状態で残り、市の文化財保護の援助で美しく修復させることができた。スタッコ装飾と天井画との繋がり具合も実にユニーク。

バスルームへのドアのトロンプイユ風のデザインも粋だ。

広々としたバスルームは5スターのデザインホテル並み。部屋の真ん中にバスタブと洗面の配置が面白い。

バスルームの天井もスタッコ装飾。

ガラスの引き戸の奥にトイレとシャワー。

地下にあるドリンクのセルフサービスコーナーへの道がなかなかスリリング。