家づくりやリノベーションにおいて、バスルームはもはや単なる「身体を洗う場所」ではありません。一日の疲れをリセットし、自分自身と向き合う「プライベート・スパ」としての役割が期待されています。
理想のバスルーム設計を実現するために、デザインや外寸以上に重要となるのが「水位」です。
このページでは、日本伝統の「和バス(和式浴槽)」と、欧米のスタイルから生まれた「洋バス(洋式浴槽)」、それぞれの水位がもたらす入浴体験の違いをご紹介します。
1.和バス(和式浴槽):深い水位がもたらす「静寂の包容力」
日本の入浴文化の原点とも言える「和バス」。その最大の魅力は、限られた空間の中で最大限の「没入感」を得られる点にあります。箱庭を眺めるような静謐な時間や、日常の喧騒から切り離された感覚を重視するバスルーム設計において、和バスの深い水位は欠かせない要素となります。単に体を洗う場所を越え、精神を整える「内省の場」としての和バスの価値を再確認してみましょう。
※TOTO商品です。
1-1.肩まで浸かる伝統と健康効果
和バスの最大の特徴は、その「深さ」にあります。古来より日本人が好んできた「たっぷりとしたお湯に肩まで浸かる」という習慣には、理にかなった健康効果が宿っています。
・厳密な水位設計: 通常、浴槽自体の深さは60cm前後に設定されています。あえて膝を曲げて座る姿勢をとることで、首元までしっかりお湯に浸かる設計になっています。
・「静水圧」がもたらす回復力: 水位が高くなるほど身体には心地よい「静水圧」がかかります。この適度の圧力が全身の血流を促し、むくみの解消や疲労回復を助けます。「ふぅーっ」と大きな息が漏れるあの瞬間は、高い水位による包容力がもたらすものです。
1-2.空間効率と意匠性
和バスは設置面積がコンパクト(長さ100~120cm程度)なため、日本の標準的な住宅レイアウトに収まりやすいというメリットがあります。しかしそのメリットは省スペース以外に留まりません。
・「縦」の空間活用によるゆとり:平面的な面積を抑える代わりに、垂直方向にボリュームを持たせることで、浴室全体にゆとりを生み出します。洗い場を広く活用できるため、介助が必要な場面や、小さなお子様との入浴にも適した機能的な設計が可能です。
・彫刻のような佇まいと素材感:独立した置き型の和バスは、その深さゆえに空間の中で強い存在感を放ちます。ヒノキや焼き物などの伝統的な素材を用いることで、浴室を「和モダン」な空間へと昇華させることができます。
・守られているという「心理的安らぎ」:四方を囲まれた深いバスタブの中に身を沈めることで、視覚的にも「守られている」という心理的な安心感が得られます。これは、広さを追求する洋バスとは対照的な、和バスならではの空間演出と言えるでしょう。
2.洋バス(洋式浴槽):低い水位で謳歌する「無重力の贅沢」
一日の終わりに、ただお湯に浸かるだけでなく、重力から解き放たれるのが「洋バス」の醍醐味です。欧米のライフスタイルから生まれたこのスタイルは、水位をあえて低く抑えることで、身体を「浮かせ、休ませる」という独自の哲学に基づいています。バスルームを心身リセットする究極のリラクゼーション・スペースとして設計するなら、洋バスがもたらす「無重力に近い体験」は見逃せません。
2-1.浮力に身を任せる「無重力」のリラクゼーション
ホテルのスイートルームなどで目にする洋バスは、和バスに比べて「浅く、長い」フォルムが特徴です。ここでの主役は、重力からの解放です。
・「水平」を生み出す水位設計: 通常、深さは40~45cm程度と浅めですが、長さは150~180cm以上に及びます。足を真っ直ぐに伸ばし、緩やかな傾斜の背もたれに身を預けることで、身体は水平に近い状態になります。
・アルキメデスの原理を味方につける:水位が低く設定されているのは、身体を「浮かせる」ことにあります。水中では体重が約10分の1に感じられる「アルキメデスの原理(浮く力)」を最大限に活かし、関節や筋肉への負担を取り除くリラクゼーション・ツールとしての側面が強いのが特徴です。
2-2.浴室を「第二のリビング」に変える
洋バスの理想的な水位は、胸元からみぞおちあたりです。心臓への圧迫が少ないため、長湯をしても身体への負担が少なく、読書や映画鑑賞、アロマを楽しみながらの瞑想に最適です。バスルームを「浴室」ではなく、もう一つの「リビングルーム」として捉える思想が、洋バスの水位には込められています。
・空間の開放感と水平ラインの美しさ:水位が低く設定される洋バスは、浴槽自体の背も低くなるため、視覚を遮らず浴室空間を広く見せる効果があります。特に窓を大きく取ったバスルーム設計では、低い水位ラインが、外の景色との一体感をより一層高めてくれます。
・安全な入浴動作:浴槽が浅いため、無理のない動作でスムーズに出入りできます。高い水位を必要としないため、縁に一度腰掛けてからゆっくりと入浴する「アプローチのしやすさ」も、ライフスタイルに合わせた設計における大きなメリットとなります。
・ライフスタイルに寄り添う多目的性:水位が低く、空間にゆとりがある洋バスは、単にお湯に浸かる場に留まらない柔軟性を備えています。半身浴をしながらマッサージをしたり、お子様と一緒に水遊びのような感覚でバスタイムを楽しんだりと、家族の成長や日々の気分に合わせた「多目的な活用」が可能です。
3. 水位を左右する技術的ポイント:オーバーフローの重要性
理想の入浴体験を実現するために見落としてはいけないのが「オーバーフロー(あふれ縁)」の存在です。
3-1.実質的な最大水位を決定する安全装置
オーバーフロー穴とは、浴槽の上部に設置された排水口のことです。お湯が溢れ出さないための安全装置ですが、これが「実質的な最大水位」を決定します。
セラトレーディングが取り扱うVILLEROY & BOCHやVITRAなどの海外ブランドは、このオーバーフローのパーツまでもが、デザインを損なわないスタイリッシュな形状になっています。
4.和洋の融合「和洋折衷バス」という選択肢
伝統的な「和バス」の安心感と、現代的な「洋バス」のリラックス性能。この両者の能力を巧みに融合させた「和洋折衷タイプ」が、現在の住まいづくりにおいて高い支持を集めています。和洋折衷バスは、日本人の体格と多様な入浴スタイルを徹底的に研究し、両者の絶妙な「よいとこ取り」をしたタイプです。
・深さの黄金比: 深さを50cm~55cm程度に設定。和バスよりは浅く、洋バスよりは深い。この「50~55cm」という設定こそ、現代のスタンダードともいえる黄金比です。
・ハイブリッドな入浴体験: 足をある程度伸ばしつつ、肩までお湯に浸かることもできる設計です。家族の中で「しっかり浸かりたい派」と「ゆったり寛ぎたい派」が分かれる場合、ひとつの浴槽で対応できるのが最大のメリットです。
5.あなたに最適な水位を見極める3つのチェックリスト
浴槽を選ぶ際、スペック表の「外寸」だけで決めるのは危険です。以下の3点を意識して、理想の水位を見つけてください。
①入浴の「目的」は何か?
・短時間で芯から温まりたいなら、水位の高い「和バス」。
・長時間リラックスし、浮遊感を楽しみたいなら、水位が低めで長さのある「洋バス」。
②身体のサイズに合っているか?
・外寸以上に大切なのが、自分の身体との「相性」です。
6.入浴体験がバスルームづくりの核心
バスルームの設計において「水位」を意識することは、単なるスペック選びではありません。あなたがどのような「入浴体験」を求めているかが、バスルームづくりの核心です。
水位一つで、一日の終わりの感覚は劇的に変わります 。たっぷりのお湯に身を委ねる幸福感も、浅めのお湯で自由を謳歌する贅沢も、すべては浴槽選びから始まります。
セラトレーディングでは、厳選したバスタブを取り揃えています。ぜひショールームで、あなただけの「至福の水位」を見つけてください。
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