この家の中心に幅4.5m、奥行き1.15mの巨大なテーブルを設置した。そこは家族が集まるとても大切な場所。好きな椅子を選んで、好きな場所で食事をしたり、一部がワークスペースになっているため、持ち帰った仕事も快適に処理することができる。リビングにはあえてソファは置かず、使い方を自由に選ぶことができる。
.8 TENHACHI HOUSE CONCEPT
.8 TENHACHI HOUSE CONCEPT
新しい家のあり方とはどのようなものだろうか。
設計者の自邸であり、東京近郊にあるマンションの一室のリノベーション。67㎡のコンクリートで覆われた四角い空間の中で、家と生活についての思考を実現化した実験的プロジェクトである。
このプロジェクトでは、常識的な「家」に定義されている利便性から必要不可欠な要素のみを残し、また利便性とは異なる空間の豊かさを最大限に引き出すことを試みた。
この住まいのテーマは大きく2つ。
テーマ1:「余地」
場所や家具に、「ここは食事をするところ」、「ここは勉強するところ」といった役割を規定せず、自分で好きな場所を選択できる「余地」のある空間となるよう配慮した。
例えばこの家の中心には4.5mの大きなテーブルがある。
このテーブルでは、調理や食事、あるいは作業をする、キッチン、ダイニング、スタディースペースの領域が緩やかで、フレキシブルに使うことができる。
テーマ2:「つながり」
家とは、privateな行動と、publicな行動が入り交じる場所である。その2つの行動をつなぐ役割として、2つの大きな箱が配置された。2つの箱は、家の中にあるもう一つの家のようである。箱の中は、privateな領域で、箱は大きな開口部によって、外のpublicな空間と緩やかにつながっている。
白い箱は寝室であり、他の空間より床や空間の高さの差をつくることで、ねぐらのような囲まれた安心感のある場所となっている。開口部は、部屋の風の通り道を作っている。
木の箱は、浴室・洗面室であり、内部は白い空間となっている。バスタブやシャワーが舞台の主役であり、まるで立体的なフレームが奥の風景を切り取っているかのよう。通路に隣接しているフレームの面は出入り口が立ち上がり、空間を切り分け、一方でつなげている。
家の中の壁は、全て天井より低く、個々がオブジェクトとして独立し、形やサイズが不揃いである。床と壁のフローリングの目地を斜め45度方向に統一することで、不揃いなボリューム感が調和し、一体感を出している。