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テラス、リビング、キッチン、ダイニングやその他の空間を一つながりにしている。一体化して広くなると、ガランと寂しい空間になりがちだが、天井の高さ、建具、壁の形、仕上げの切り分け、家具や照明などによって、緩やかに連続した空間となるように試みている。
内と外の「あいだ」
既存マンションの、上層階住戸の全面改修。一般的にマンションには庭がないため、ほとんど屋内だけの生活となり、テラスはあっても、洗濯物を干すくらいでほとんど利用しない。内と外は、規格化された大きさの窓によって仕切られてしまい、エアコンを常時使用して、窓を開け放って季節と共に生活することもほとんどない。生活は設備機器に依存してしまい、室内に密閉され、家庭の電気エネルギーの消費量はこの半世紀で約5倍になっている。
ここでは、その内/外を分け隔てる「/」を仕切りとして考えるのではなく、「生活を豊かに膨らませるための場所」として新たに考え直そうと試みている。今回ここでいう「/」は、マンションに新しく設けた2つのテラスとして計画されている。それらの空間は季節や時間によって、内のような外となり、あるいは、外のような内となって、私たちの境界の感覚を揺さぶり、内に閉じた生活を外へと導いて、それらが楽しく豊かに拡がってゆくような場所になるように試みている。
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内/外を単純に「区画」として捉えるのではなく、動かせない既存の柱や外壁の仕上げ、照明を工夫することによって、感覚的に内/外の境界を曖昧にし、自然に窓を開け放ち、何気なく生活がその境界をまたぐようになることを考えている。
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リビングの一画に入り込んだような形のテラスのラウンジ。食事をしたり、くつろいだりできるようにしている。 -
テラスの床は、フローリングと同色でフラットにつながったデッキと、一段下がったタイルの床。タイルの床までは夏の日中の直射光と吹き込んだ雨があたる。