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コンクリートとガラス、グレー色の塗壁によって、最小限に表現された外観。豊かな自然環境に恵まれた住宅街にあって、緊張感のあるその静かな佇まいは、デザインに造詣の深いオーナーの、住まいに対する透徹した意思を湛えている。 -
アプローチ夜景。静謐さに包まれながら、玄関へと向かう。
光と色が美しい邸宅
長く静かなアプローチを抜けて辿り着いた玄関ホールには、光庭からの自然光が差し込んでいる。上質なカーペットが敷きつめられた、ゆったりとした階段を抜けると、この建物で唯一となる大開口から、周囲の山並みを見渡すことができる。
外観と同様に抑制された内部のしつらいは、リビングに置かれたイタリア製モダン家具の色彩をひときわ際立たせている。
それらの情景こそが、オーナーのイメージとしてまず最初にあり、そこからこの住宅の全てが始まった。
グレー色、階調を指し示すその抽象度の高い色合いをカラースキームの核として吟味し尽くされた。素材、色感、テクスチャー…、そして光についての検証と実践。
バスルームとサニタリー空間に対する追求もまた、同様である。その小さな空間をイメージ通りのものとするため、何パターンもの間取りを比較検討し、繊細な造作や仕上げに至るディテール、ライティング、そして選び抜いた衛生機器やアクセサリー。
オーナーと設計者との果てしない協同作業、イメージを形にしていく作業の繰り返しを経て、ようやく完成したこの住宅の魅力と独特な空気感は、オーナーが大切にした光と色への美意識によって創り出されている。