消滅集落のオーベルジュ「Cuisine régionale L’évo」
人口わずか500人の富山県南砺市利賀村に、かつて存在した集落である「田之島」。一度は消滅したこの集落を、まるごとホスピタリティの空間としてデザインした、究極の地産地消を目指したオーベルジュ。地域に根差した文化や建築様式を読み取りデザインすることで、この場所ならではの新しい風景をつくった。
素材を大切にするこの施設では、食材はもちろん、水にまでこだわっている。周辺の山間から集められた澤水によって活動が成り立つこの施設において、衛生器具は、ここでの体験を演出する重要な役割を担う。土着的な建築デザインの趣に馴染みながらも、ラグジュアリーな宿泊空間を演出できる器具を模索する中で、洗練されたフォルムのグレー色の陶器に辿り着いた。施設の空間を象徴するデザインのひとつとなった。
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利賀川の谷筋に沿うように建ち並ぶ施設群。周囲の山間から澤水が集められる。この地に大切に引き継がれた水源こそが、ここでの活動を可能にした。 -
豪雪地ならではの“雪割”の設えを翻訳してデザインした「地域の屋根」が、施設の外観をつくる。土着的な建築様式や文化を読み取り、現代的に用いることで、この地ならではの歴史と調和する、新しい地域の景観をデザインした。
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オーベルジュのロビー受付。富山湾の魚の皮をつかったペンダントライトや、地元企業のつくるセメント板を用いた受付カウンターなど、地域の素材をふんだんに盛り込んだインテリアデザインにした。 -
オーベルジュのロビーからは、谷筋に沿った山間の景色が一望でき、水のせせらぎを感じることができる。