Arne Jacobsenアルネ・ヤコブセン


世界を魅了し続ける、時間を超越した、デザインの原型。

20世紀という名の巨大な白いキャンバスに、未来という名の夢を描き続けたアルネ・ヤコブセン。建築やインテリアに関心を持つものならば、その名は記憶に深く刻まれていることでしょう。1902年、コペンハーゲンのユダヤ系家庭に生まれ、幼少期には、ビクトリア様式の家具に囲まれて育った彼が、親に黙って自室のデコラティブな壁紙を、真っ白に塗り替えてしまったというエピソードがあります。シンプルな美に対する強い共鳴が、すでに早熟な少年の心に芽生えていたのでしょう。画家か彫刻家を夢見ながら、父親の勧めで、最終的に「どちらの要素も含んでいる」建築家を志しました。24年、デンマーク王立美術アカデミーの建築科に入学したヤコブセンの心をとらえたのは、当時一世を風靡していたバウハウス、ミース・ファン・デル・ローエ、ル・コルビュジェといった異才の眩いばかりの活躍でした。デザインの世紀と呼ばれるその刺激的な環境の中、その才能は開花していったのです。「機能や、合理性を追求しながら、どこかに自然の温もりが感じられる。」それは、よく北欧デザインに対して用いられる表現です。ヤコブセン・デザインもまた、マンネリズムとオーガニックなフォルムをもつうえ、使いやすさが追求されたものばかり。だからこそ、いまでも生活道具として愛用され続けているのでしょう。

自然をこよなく愛していたヤコブセンは、庭園の設計もいくつか手掛けています。学生時代から自然を題材にした水彩画に長けていたそうで、その片鱗は彼の建築作品に使われた自然をモチーフにした壁紙やテキスタイルに見ることができます。北欧デザインの方向性を決めたとも言われるヤコブセンの作品は、人にやさしいデザインゆえに、半世紀の長きにわたり人々に愛され続けています。頑固者だったとされる、生前のアルネ・ヤコブセン。彼は建物を完璧につくっても、その内部空間に趣味やコンセプトの異なるモノが在ることに妥協しませんでした。そんな頑なさが、かの有名なアリンコチェアをはじめ、時計、食器、カーテンといった、既成の枠組みにとらわれない多岐にわたる膨大なプロダクツを生み出したのです。デンマーク国立銀行設計時にデザインされ、Volaシリーズとして1968年に発表された水栓もまた、そうした思いを込めた彼の作品です。Volaの新しさは、当時では珍しいビルトインタイプの水栓だけでなく、モジュール化されたパーツどうしの組み合わせ、空間に調和させることのできる製品であったことがポイントです。新しさとか古さを感じることすらできない、まさに時間を超越したデザインの原型です。教会装飾の鋳物メーカーとして1873年に創業。1955年に水栓金具の専門メーカーとしてスタートしたVola社は、その後もそのシンプルなスタイルが世界で評価され続け、各国の美術館コレクションに選ばれています。

Arne Jacobsen

Arne Jacobsen

アルネ・ヤコブセン(1902〜71)

建築家やデザイナーとしてハンス・ウェグナーやフィン・ユールと共にデンマークのデザインを世界中に広めた代表的人物。優れたデザインの家具や建築物を創造し、数多くの賞やメダルを受賞。ヤコブセンの代表的な作品には、スワンチェア、セブンチェア、3300シリーズ、その他多数の金字塔とも呼ぶべき、優れたデザインの家具があります。

© フリッツ・ハンセン
© フリッツ・ハンセン
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